研究課題/領域番号 |
25360003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
八百板 季穂 北海道大学, 観光学高等研究センター, 特任准教授 (30609128)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文化的景観 / バングラデシュ / テクナフ |
研究概要 |
本研究の目的は、貧困地域でかつ観光未開発地域であるバングラデシュ人民共和国テクナフ半島の複数の集落において、特徴を有する生業に着目し、有形・無形の遺産を総合的に把握することで持続可能な観光開発の資源として価値付けることである。具体的には以下の4 点、すなわち、①テクナフ半島全体の景観構造の解明(景観構成要素と空間構成の分析)、および、文化的景観構成要素としての②農業集落の遺産価値、③漁業集落の遺産価値、④塩田集落の遺産価値、に着目した調査・分析を実施することで、テクナフ半島全体の文化的景観としての遺産価値を明らかにする。またさらに、上記の成果を考察し、地域景観を持続可能な観光開発に活用可能な文化遺産として評価する研究手法としての本研究の妥当性及び応用性を検証する。 本年度は、現地渡航を予定していたものの、ミャンマーとの国境に位置する対象地における政情不安から、渡航はせず、国内で実施可能な調査を進めた。 まず本年度は、航空写真を用いてテクナフ半島全体の景観構造の解明に取り組むとともに、国内外の事例について調査した。その結果、「文化的景観」として世界遺産に登録されているもののうちの多くがヨーロッパの都市や庭園であり、生業が生み出す景観の場合でも、複数の生業が生み出す複合的な景観が登録されている事例は少ないことが分かった。すなわち、テクナフ半島のような多様な伝統生業が生み出す景観を価値づけて登録した事例が少なく、他のサイトとの比較事例においても十分に世界遺産登録の可能性を有することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の調査では、ミャンマーとの国境付近の政情不安から、現地への渡航を見送った。対象地であるチッタゴン管区内では、仏教徒とイスラム教徒の間で民族間の衝突が起こっていた。そのため、予定していた現地調査を見送った。 そのため、全体的な計画から見ると、研究はやや遅れているものの、テクナフ半島全体の景観構造を明らかにし、さらに、計画していた国内の先行事例調査のみならず、海外の事例調査(文献を使用した調査)をすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度については、政情が安定してきたため、昨年度分と今年度分の現地調査を実施する。また、国内のみならず、海外の先行事例についても現地調査を実施する。 海外の先行事例としては、昨年世界遺産登録を果たしたフィジー共和国旧首都レブカに渡航し、世界遺産登録後の遺産マネジメントおよび観光マネジメントについて調査する。 現地では、バングラデシュ第1次調査(21日間)として、ダッカにて関連省庁や大学機関で情報収集を行うとともに、テクナフ半島全体の景観構造解明のための調査を行う。さらに、また、農村集落および半農半漁集落において、文化的景観構成要素としての価値付け調査を行う。これらの情報を図面にまとめ、景観構造を分析、個々の集落の景観特性を明らかにした上で、全体的な景観構造の特性について検討を始める。その検討結果から、世界遺産登録のために必要な「顕著な普遍的価値(OUV)」の説明文の提案、「完全性」を証明するための構成要素、および遺産の「真正性」を証明するための学術データを収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
対象国内の政情不安により、現地への渡航を見送ったため。 今年度に、前年度分の調査を合わせて実施する。
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