研究課題/領域番号 |
25360004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡邉 一哉 山形大学, 農学部, 准教授 (80406892)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 沿岸資源利用 / カキ / ハイガイ / 歴史環境学的視座 / タイ国バンドン湾 / 養殖技術 / 洪水 |
研究概要 |
環境や人為的にもたらされる攪乱に対して、生物資源とそれを利用するヒトがどのような対応をし、高い生産性と利用域の拡張を同時に達成してきたのだろうか.地域のくらしは、地域固有の環境特性をふまえた知識体系や技術体系をはぐくんできていると言え、生態資源との相互依存性は、地域社会の基礎構造に埋め込まれていると言える.本研究では、タイ国バンドン湾の環境において、攪乱と応答の繰り返しによる現在の相互依存の形成過程を複数の視点から明らかにすることを目的とした。 これまで申請者(渡邉)の調査によって、調査地での二枚貝養殖が1960年に開始されたことが明らかとなっている。H25年度の調査によって、少なくとも3度の大きな技術的変革を経て、現在の養殖技術(セメントポールスタイル)が確立されたことを明らかにした。 当該地でのカキ養殖技術は、粗放的である。それは、湾内の基礎生産量が極めて高くまた良好であることから成立するものである。一方で、災害においても無防備な状況と言える。では、当該地は災害とは無縁なのであろうか。そこで、本年は特に過去の気象状況および災害状況の詳細情報の入手に努めた。その結果、約50年分の日雨量データ、30年分の河川流量データが得られた。同時に農協銀行の貸付情報についてもかなりの情報量を入手することができた。詳細な分析は26年度以降になるが、少なくとも毎年、雨季には洪水被害が発生しており、5年~10年に一度、湾全体に及ぶ大規模な水害による生産個体の死亡事故が起こっていた。これらを整理したうえで、今後は、定期的な収入源の遮断(災害)が繰り返されているにも関わらず、それに応じた技術発達がされないのか。また、二枚貝養殖という生業にこだわるのかと言ったより深層部分に踏み込んだ調査を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物生態に関する調査は、現地およびタイ国内大学・日本国他機関の協力により、湾内の基礎生産量の把握がほぼ完了した。 また、約50年間の水文情報も入手でき、養殖開始時期から現在までの洪水の発生時期の再現が可能となった。水文情報に関しては、当初の予定を大きく上回る成果を挙げることが出来た。 一方で、タイ国内の政情不安により、社会科学調査の一部が未完のままである。しかし、現地協力者との関係は良好であり、政情安定(H26年度4月現在で既に安定)と共に再開できる状態ではある。 以上を踏まえて、本年度の達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、政情不安もあり、一部の社会科学調査が予定通り進んでおらず、H26年度に繰り越された(含む経費)。しかし、H26年度調査のスケジュールを大きく変更せずに補完できる予定である。 H25年度で得られた成果をまとめ、国際誌に投稿する。第一報をH26年度に行う予定である。 その他は、研究計画に沿って行う予定であり、変更の予定はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイの国内情勢不安により、謝金やその他の項目からの支出が当初の予定通りとならなかった。一方で限られた時間での調査となったため、日本国から調査に習熟した協力者を同行し集中的に行う必要が生じた。そのため、旅費が当初の予算額を大きく超過している。これらの総計により、138,169円を繰り越すこととなった。 H25年度繰越金は、H26年度の予算の主に謝金とその他の費目および旅費に振り分け使用する予定である。
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