研究課題/領域番号 |
25360005
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
阪本 公美子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (60333134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 幼児死亡率 / タンザニア / 東アフリカ / 母子保健 / 健康 / サブシスタンス / 在来知 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究の2年目として、タンザニア国南東部リンディ州MchingaⅡ村、及びドドマ州Majereko村それぞれにおいて、100名の女性を抽出し、そのうち前村では98名、後村では95名に対して、質問票インタビュー調査をスワヒリ語で実施した。その単純集計結果については、「Situation of Women and Children in Central Tanzania」及び「Situation of Women and Children in Southeast Tanzania」を発表した。 そこでは、いずれの地域でも、半数以上の女性が子どもを亡くす経験、及び子どもの病気を経験していることと、女性たちの属性、教育・儀礼経験、家族構成、生活と食料、所得、子どもに関する状況を報告した。 これを踏まえ、子どもの死亡や病気が、どのような要因に影響されている可能性があるのか、クロス集計分析や相関関係分析によって探求した。その結果、年代と有意な関係にあり、両村において時代に伴う子の健康改善は確認できた。年代と関係なく子どもの死亡や病気と関係がみられたのは、出産の場や介助者(自宅出産より医療施設)、近代的(有利)・伝統的(両論)な知識やアドバイス、離乳食、現金の重要な消費項目、夫の存在、ケアに関する相互扶助関係であった。年代、サービスや知識については共通した結果となったが、食や消費、家族・社会関係については村間で相異なる結果となった。 また、全国レベルでの州別分析も行いリンディ州・ドドマ州・ザンジバル北部の位置付けを明らかにした。また現地における研究に関して入手した最新情報・データの入手も含め先行研究を整理し、直接農村にて調査した結果の位置づけを精査している。また母子保健にも関連する成人儀礼については、広く東アフリカ・中央アフリカの文献も含めてレビューした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、データ分析、南東部および中部における質問票調査、ザンジバルにおける調査を行い、生存と死亡に関する包括的理解に関する考察に着手できた。さらに、在来知として注目していた薬草については、計画以上の収穫があった。 研究計画と照らし合わせると、具体的には以下の進捗がある。 1.対象貧困地域の位置付け:Tanzania Demographic Health Survey (TDHS)に基づき、乳幼児死亡率及び関連指標のクロス分析を行い、リンディ州、ドドマ州、北ザンジバルの位置付けを行った。 2.最貧困地域の生存にかかわる「間接的要因」の影響については、前年度の聞き取り調査結果を踏まえ、包括的なインタビューによる質問票調査を2地域(南東部・中部)において100名の女性に対して行い、幼児死亡に関連しうる要因を絞りだした。また昨年度の調査結果をフィードバックし、事実確認なども行った。質問票調査の単純集計はスワヒリ語・英語でとりまとめ、今年度フィードバックする準備がある。(c)ザンジバルにおいては、質問票調査を関係者と共有し、他地域調査結果を参照しながら、対象調査村を選定した。また、ザンジバルにおいて、薬草などの在来知や女性の生活に詳しい有識者にに対するインタビューを行った。いずれの地域においても、①乳幼児死亡の直接的原因の把握、②個人や社会の価値観・選択・知識、③社会構造、④自然との関係、⑤歴史的変容を配慮し、調査をすすめた。(d)なお、在来知として、薬草について上記3地域において調査を進めた。成女儀礼については、東アフリカ・中央アフリカに範囲を広げ、文献レビューを行った。 3.生存と死亡の包括的理解については、南東部と中部ドドマ州に関する生存と死亡の包括的理解について分析をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、科研最終年として、以下を予定する。 1.対象貧困地域の位置付け:整理した先行研究、州別相関関係分析をもとに、タンザニアにおける幼児死亡率の影響要因、幼児死亡率が比較的高い南東部のリンディ州、中部ドドマ州、および北ザンジバルの位置付けについて、とりまとめた成果を発表する。 2.最貧困地域の生存にかかわる「間接的要因」の影響 (1) リンディ州とドドマ州における農村質問票調査に基づき相関関係を分析した幼児死亡や病気の影響要因について成果をまとめ、発表する。(2)現地調査にて、ムチンガⅡ村・マジェレコ村、県・州担当者等タンザニア政府関係者に、質問票調査結果の単純集計をスワヒリ語・英語でフィードバックする。さらに、絞り込んだ関連要因について、主に村の女性たちに個別インタビューを行い、社会的背景を理解する。(3)2村の結果を踏まえて絞り込み改定した質問票を、北ザンジバルの村において実施する。その単純集計を発表・フィードバックし、補足的インタビューも行う。 3.生存と死亡の包括的理解のとりまとめ タンザニアの州別分析、幼児死亡率が高いリンディ州・ドドマ州・北ザンジバルにおける質問票調査結果・インタビュー調査結果、観察結果を総括し、①幼児死亡の直接的原因の把握、②個人や社会の価値観・選択・知識、③社会構造、④自然との関係、⑤歴史的変容も踏まえたとりまとめを行う。さらに、これまでの研究を総括した論文集をまとめるとともに、将来的な出版物についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注していた洋書が在庫切れとなり、納品されなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
今年度未納であった洋書に代わる書籍を購入予定
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備考 |
スワヒリ語質問票結果:SAKAMOTO Kumiko (2015)“Dodoso kuhusu Hali ya wanawake na watoto: Majereko Village, Chamwino District, Dodoma Region, 2014;“...: Mchinga II Village, Lindi District, Lindi Region, 2014”
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