本研究目的は、(1)現在メコン川流域内国家、特に社会主義国の国境地域で緊急の教育課題となっているニューカマー(ベトナム、ラオス、中国雲南地方国境を流出入する外国人児童や無国籍の山地民児童など)の学校就学の阻害要因とその教育格差を多面的に分析し、さらに(2)越境児童教育のために学校内外の多様なアクター(国際機関、国際・現地NGO等)が作る域内教育協力ネットワークの形成要因とその役割を解明することである。つまりそれぞれの枠組みを解明し、多様なメコン地域開発途上国において如何にして越境児童の就学を達成できるのか、その方策とそれに対するメコン地域の国際教育協力を導き出すことを目指す。平成27年度の調査は「不就学の家族要因」「教育格差要因」「ネットワーク形成要因」解明のためにフォローアップ調査と総合的分析である。具体的な調査項目は、① 社会主義国の越境ニューカマー不就学要因を、諸要因間の関係から総合的に理論化する。②社会主義国国境のニューカマー不就学に関わる家族要因の面接データを詳細に分析し、流動型家族と不就学の関係、流動型家族の教育戦略、流動型家族と教育格差の関係を解明する。③ 越境ニューカマー児童に対する教育協力ネットワークの形成過程と有効性の解明:ネットワーク形成を促す諸要因、さらにネットワークが作るオルタナティブな教育方法や教育内容などの革新性や連携によるシナジー効果を理論的に解明する。経済体制(社会会主義国:ラオス・ベトナム・中国、自由主義国:タイ)と越境不就学児童の関係性。④ 研究報告書の作成である。
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