研究課題/領域番号 |
25360015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
波佐間 逸博 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 助教 (20547997)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘルスケア / 医療 / アフリカ / 牧畜 / 身体 |
研究概要 |
今年度は、日本アフリカ学会第50回学術大会、長崎県小浜市での牧畜研究会、南スーダンのジュバにおけるフォーラム“Comprehensive Area Studies on Coexistence and Conflict Resolution Realizing ‘African Potentials’” “Peacebuilding and ‘African Potentials’: Harmonizing Approaches from Above and Below in South Sudan and Beyond”にて計3回の口頭発表をおこなうとともに、研究実施計画のとおり、開発・医療人類学を専門とする研究者と意見交換し、議論の機会を持った。また、ウガンダにおいては、国際保健・公衆衛生分野における政策と実施されている介入の具体例とともに、医療人類学の研究動向に関して、マケレレ大学の社会医学者にインデプス・インタビューをおこなった。明らかになったことは、①近年、国家の周辺で移動生活をいとなむ先住民の基本的権利として健康権を位置づけ、保健医療を重視した政策を整備する必要性が訴えられるようになってきていること、②青年層以上の牧民が抱えている身体の痛みや異常のおおくは直接的、間接的に、現地に駐留している歩兵の部隊や近隣に居住している家畜略奪集団による暴力を原因として生起していること、③直接的な健康被害の典型例は、軍による攻撃と拷問によって負っていること、④遊牧民社会における保健政策をあらためるために国際人権基準や地域の判例法を活用する方法が提起されていること、⑤内臓リーシュマニア症やブルセラ症、トリパノソーマ症など人畜共通感染症がウガンダ、ケニア、南スーダン国境の牧畜地域で問題となっており、国際援助機関との協力をつうじて地域保健の新しい試みが実施されていることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画におけるめあては、①感染症、栄養、乳幼児死亡率・罹患、妊産婦死亡に注目して東アフリカ牧畜社会における保健政策とその健康影響の関連を先行研究のレビューから明らかにすること、②多元的なヘルスケア・システムの現状を住み込み調査によって把握すること、③社会開発分野における技術融合の観点からコミュニティヘルスの問題にアプローチする方策を示すことであった。今年度に発表した論文「東アフリカ牧畜社会におけるヘルスケア―ローカリティに基づく医療支援に向けて」では、牧野の伝統医療と生物医療の連携に関するローカルな努力によって、持続的なヘルスケアの供給を確保する新しい試みが創出されていることを報告した。今後の研究進展に向けた新しい着眼点も示しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のフィールドワークの成果は、日本アフリカ学会や牧畜研究会において発表しているが、より詳細な成果報告については、2014年度に刊行を予定している一般に向けられた商業出版物をつうじておこなう。さらに、研究進展の可能性をさぐるために、研究者に向け学術誌『アフリカ研究』に論文を公開することをつうじて、学術的な議論を深める。 また、横浜で開催される国際社会学会では、本研究課題と関連する理論的な展望、つまり、変容する社会において身体が生活世界をきりひらいてゆく様相を記述するうえでの理論的な展望をえるために、アジアにおける難民の病いと治療実践、西南部エチオピア牧畜民における文化的戦争拒否者、グローバリゼーションのもとでの中央ケニア牧畜民の身体をめぐる変容についての研究報告からなるセッションを組織し、社会科学における身体という研究テーマを共有する研究者たちと議論をおこなう。
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