社会保障制度が未発達である開発途上国では、認知症高齢者の介護をその家族がほぼ全面的に担う。認知症の行動・心理症状は介護者に大きな精神的負担をもたらすために、核家族だけではなく、拡大家族の多くの構成員が介護に協力するのが理想的である。メキシコの場合、認知症介護に対する拡大家族の反応は画一的なものではなく、非常に様々であった。危機を乗り越えるために結束を強めた家族もあれば、介護者を孤立させてしまう家族もあった。介護に協力してくれる人とそうでない人とに分断された家族もあった。認知症介護に対して、拡大家族における助け合いは必ずしも期待できるものではなかった。
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