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2013 年度 実施状況報告書

多文化社会ケベックのインターカルチュラリズム

研究課題

研究課題/領域番号 25360020
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北文化学園大学

研究代表者

飯笹 佐代子  東北文化学園大学, 総合政策学部, 准教授 (30534408)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードケベック価値憲章 / ライシテ(脱宗教化) / 『ブシャール=テイラー報告』 / アコモデーション(妥当なる調整)
研究概要

25年度の目的は、多文化社会ケベックの文化間の調和と共存に向けた取り組みについて、主として2008年にケベック州政府の「文化的差異に係るアコモデーションの実践に関する諮問委員会」によって公表された報告書『未来の構築-和解のとき(Fonder l’avenir: Le temps de la conciliation )』(『ブシャール=テイラー報告』)の影響を手がかりとしながら考察することであった。
折しも現地調査中の2013年9月、当時のポーリン・マロワ政権によって「ケベック価値憲章(Charte des valeurs quebecoises)」が提案された。それは宗教的アコモデーションに対する政府の姿勢を示したものであり、ケベック社会に大きな論争を引き起こした(なお、その後11月7日に、「ライシテ及び国家の宗教的中立性ならびに男女間の平等の諸価値を確認し、アコモデーションの要求を規制するための憲章」と改称され、60号法案としてケベック州議会に上程された)。
「ケベック価値憲章」において最大の争点となっているのは、勤務中の公務員に対して、これ見よがしな宗教的シンボル(signes religieux ostentatoires)の着用を禁止するというものである。これは、上述の『ブシャール=テイラー報告』が提唱した「開かれたライシテ(laicite ouverte)」という考え方を否定するものであり、ケベックのこれまでのインターカルチュラリズムないしは多元主義に関する大きな方針転換をも意味する。
現地での当該領域の専門家への聞き取りと文献調査を通じて、「ケベック価値憲章」が登場した社会、政治的文脈や、同憲章をめぐる争点について把握するとともに、多文化社会ケベックの動向を考察していく上での新たな論点と課題を見出すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

折しも現地調査の滞在中に「ケベック価値憲章」がマロワ政権により提案され、まさしく大論争のただ中という臨場感の中で、問題の構造や論点をより明確に把握することができ、充実した調査となった。テレビや新聞、雑誌等のメディアにおける取り上げられ方や論調をリアルタイムで観察でき、また、学者はじめ各界のオピニオンリーダー、政府関係者への聞き取り調査も予想以上の協力を得て貴重な意見や情報を入手し、有益な研究視点を得ることができた。
これらの調査による成果については、すでに学会誌に投稿したところである。

今後の研究の推進方策

2014年4月のケベック州議会総選挙によって政権交代が行われたため、前政権のケベック党が上程した「ケベック価値憲章」は、結局のところ廃案となった。宗教的なアコモデーションやライシテ(脱宗教化)、さらにはインターカルチュラリズム全般に関して現政権の自由党がどのような政策を採っていくのか、今後の展開を注視していきたい。
また、引き続き「ケベック価値憲章」をめぐる一連の政治過程について分析・考察した論文・資料を収集し、同憲章の社会的、政治的な意味や影響について、さらなる検討を加える必要がある。

次年度の研究費の使用計画

PCの購入を新機種の発売を見込んで見送ったことと、海外出張旅費の一部(宿泊費)に日本ケベック学会奨励賞の賞金を充てたことによる。
現地調査を実施し、現政権の政策の展開を追うとともに、モントリオールおよびその近郊を中心に、多様な文化が接触する日常的な場面や文化・芸術、創造活動の場面において文化間関係に何が起こっているのか、その実状把握に重点をおく。特に、教育、医療などの領域や、多文化交流の場(芸術、創造活動の場も含む)に着目し、現地視察および関係者や専門家への聞き取り調査を行う。
PCの購入を検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] スケープゴート化されるmulticulturalism?

    • 著者名/発表者名
      飯笹佐代子
    • 学会等名
      カナダ教育学会シンポジウム
    • 発表場所
      日仏会館(東京)
  • [学会発表] 論争の中の「ケベック価値憲章」

    • 著者名/発表者名
      飯笹佐代子
    • 学会等名
      日本ケベック学会研究会
    • 発表場所
      立教大学(池袋キャンパス)
  • [図書] 「第9章「「多文化共生」という無難な安全地帯」伊豫谷登士翁編『移動という経験-日本における「移民」研究の課題』2013

    • 著者名/発表者名
      飯笹佐代子
    • 総ページ数
      185-209頁
    • 出版者
      有信堂

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公開日: 2015-05-28  

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