研究課題/領域番号 |
25360027
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
落合 明子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (30264831)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国立エスニック博物館 / アフリカ系アメリカ人 / アメリカ先住民 / 博物館と文化ポリティクス / 「国民物語」の再編 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アメリカ合衆国の首都ワシントンにある国立アメリカ・インディアン博物館(2004年開館)ならびに国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館(着工済で2016年開館予定)の法案可決までを中心とした設立過程に注目し、それぞれの推進者がどのようなポリティクスを駆使したことで博物館が実現したのか、その際にマイノリティの歴史や文化を「国民物語」にどのように組み込もうとしたのかを比較検討することである。加えて、ヒスパニックや他のマイノリティ集団による最近の国立博物館設立運動も検証し、「国民」の境界を巡る攻防における各集団の特殊性、およびマイノリティとしての共通性を抽出する。以上の考察を通じて、「国民物語」の再編過程や最近の多文化主義の動向、多文化共生社会の実現に向けて博物館が果たしうる役割を明らかにすることも目指している。 研究の2年目にあたる本年度は、昨年度に引き続き国立アメリカ・インディアン博物館と国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館の資料の分析を行った。加えて、国立ラテン系アメリカ人博物館推進運動と国立アメリカ人博物館推進運動に関する基礎情報の収集も始め、8月にはニューヨークおよびミシガンで現地調査も行った。ニューヨークでは国立アメリカ・インディアン博物館(ジョージ・グスタフ・ヘイ・センター)も訪問し、スタッフの方にインタビューを行うこともできた。年度の後半は、収集した資料の精読と分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度当初に立てた計画に従い、博物館学全般およびマイノリティ諸集団と博物館についての情報の整理を進めると共に、2つの博物館を比較する作業にも着手した。 国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館に関しては、最新の学術研究を入手したことに加え、建設状況や展示計画など、インターネット及び関係者から得た最新の情報を追加した。 昨年度の時点で不足していた国立アメリカ・インディアン博物館についての資料を入手し、精読を進めている。アメリカ先住民史を専門とし、トュールリヴァー部族による博物館建設計画にも関与している野口久美子氏にも助言を求め、アフリカ系アメリカ人と先住民の博物館に対する姿勢の違いなど、比較検討する際の論点を整理した。 また、相手側の都合で直接お会いすることは出来なかったが、国立アメリカ人博物館建設運動を推進しているサム・アシュケナージ氏とメールでやり取りをする過程で、同博物館についての資料や情報を入手することができた。 全体的には、当初の計画よりも作業はやや遅れている。考察の中心となる国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館と国立アメリカ・インディアン博物館を比較するには論点をより明確化する必要がある。また国立アメリカン・ラティーノ博物館建設運動については、何度も連絡を試みてはいるが、運動の推進者と実際にコンタクトをとることが現時点では出来ていない。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き研究効率をより上げるように努め、既に訪問した博物館に関連した資料やインタビューの整理・分析の遅れを挽回する。国立アメリカ・インディアン博物館と国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館に見られる特徴や課題の共通点や相違点を、歴史的な文脈に照らし合わせながら整理すると共に「国民物語」との関係など総合的な検討も行い、研究成果をまとめる作業に入る。その際、国立アメリカ人博物館や国立アメリカン・ラティーノ博物館などもエスニック博物館の将来の方向性を示すものとして考察に入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
発注していた洋書が、26年度の支払期日までに届かなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
27年度中に入手見込みなので、27年度分の支出に計上する。
|