研究課題/領域番号 |
25360031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
藤田 渡 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (10411844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農村の所得向上 / ゴム栽培による森林減少 / 自然資源の希少化 / ゴム栽培による生業活動の変化 |
研究概要 |
本研究の目的は、タイ東北部農村でのゴム栽培・アブラヤシ栽培と、既存の生態資源利用 や生業システムとの調和のあり方を考えることである。そのために、今年度は、以下のような調査活動を行った:1)統計など基本的な情報収集、2)関係する官公庁での聞き取り調査、及び、資料収集、3)調査村(ナーコー村)での人びとの生態資源利用の変化に関する聞き取り、及び、参与観察、である。その結果、以下のように、今後研究を進めるために重要な示唆となる事項が明らかになった:1)統計資料により、東北部でのゴム栽培が2003年以降急激に拡大した。これは調査村での傾向と一致する。センサス統計によれば、2000年と2010年の間に調査村のあるウボンラチャタニ県での農家所得は向上しているものの、これまでゴムの主産地であった南部と比べると半分以下である。2)官公庁での聞きとりによれば、タイ東北部でのゴム栽培振興策は、マレーシアでのゴムからパームへの転換を契機にしていた。しかし、政府の振興策と無関係に農民の自主的な投資で拡大した部分が圧倒的である。現在は、官民合同の委員会を中心とした政策決定が行われている。東北部での振興に当たり、10年間の栽培試験が行われ、農民に普及すべき知識の構築が行われた。3)調査村では、ゴム栽培導入にともない、所得向上が見られた。また、夜間にゴム・タッピングの作業を行うため、生活時間が大きく変化した。ゴム栽培に伴う森林減少の結果、人びとが資源の囲い込みを始めたことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画を一部変更し、官公庁での聞き取り・資料調査と村落での調査を並行して行うようになった。これは、両者の相関関係を意識したためである。また、悉皆調査はすでに行ったものをデータクリーニングして使うこととした。ゴム導入に伴う農民の生活の質的変化をまずは把握するべきと考えたためである。このように当初計画の一部、変更はあるものの、上記のように、興味深い成果が得られており、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、これまでの研究を一層、深化させるべく調査を継続する。特に、今後は、農民の生業活動の質的変化、及び、政府、NGO、企業といったアクターとの相関を動態的に探ることに傾注する。そうすることで、変化し続けるグローバル社会の中での人びとと生態資源との関係のあり方を模索する。基本的にはこれまで通り、申請者の個人研究に近い形で進めるものの、本研究計画終了後の展開を考え、現地研究機関との共同研究の可能性をも探る。
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