研究課題
ラオス・サワナケート県農村部の聞き取り調査で得られた人口データと社会変化データをもとに、人口変化と生業変化を媒介する再生産戦略・行動について検討し、学会発表を行った。タイへの出稼ぎが盛んな水田稲作地域では、出稼ぎの開始と前後して1990年ごろから出生率が低下し始めた。背景には、1950年代にさかのぼる死亡率低下により急激に人口増加したこと、1960-70年代に出生した人たちが成人し自身の家族形成のライフステージに到達したこと、そして出稼ぎの開始と前後して、避妊薬が普及したため、意図的な出生調整が可能になったこと、さらに学校教育が始まり、子どもの就学が一般化したため、以前とは異なり、たくさん子どもをもつことが経済的な負担になったことが指摘できる。これに対して、焼畑稲作を伝統的な生業とする山間地域の住民は、集落によって過去の人口変化の様相や現在の出生率の水準に違いがみられた。母子保健サービスや避妊薬の利用は、保健医療機関のある町へのアクセスのしやすさに応じて異なっているだけでなく、妊娠・出産・育児にかかわる意思決定プロセスのなかで妊産婦・母親の立場と役割が民族集団によって異なっていた。本研究では、農村社会をとりまく社会的・制度的な変化のなかで妊娠・出産・育児という人口再生産戦略の変容過程を地域比較の視点により実証的に明らかにできた。研究成果は3つの国際会議を含む学会で報告し、参加者と討論した。さらに精緻な分析を行い、国際学術誌への投稿に向けて準備中である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Tropical medicine and health.
巻: 43.2 ページ: 95-100.
10.2149/tmh.2014-37
Journal of Helminthology
巻: 89.4 ページ: 439-445
10.1017/S0022149X14000261