研究課題/領域番号 |
25360035
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
飯田 卓 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 准教授 (30332191)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天然資源 / 暫定政権 / 小規模生産者 / アフリカ / マダガスカル |
研究実績の概要 |
2009年はじめの実質的クーデターから7年、2013年末におこなわれた大統領選挙から2年が経ったが、マダガスカルにおける政治はいまだじゅうぶんな透明性をとり戻していない。この間、2008年頃から準備されていた地方行政改革が進み、6つの州が解体して22の地域圏に再編されたが、結果的にこれにより政治状況がますます複雑になり、正常化への道筋が容易に見通せなくなっている。 本研究を進めるうえでは、状況をさらに複雑化させる要因として、国家の統制を超えた民間企業活動の活性化(バイパス型私企業活動)があるという仮説を立てた。この仮説はあるていど証明されたと自己評価しているが、この状況の引き金となったのは国家ガバナンスの低下だけでなく、上記のような地方自治体の活発化も無視できない。マクロな視点から導いたこの結論が、本研究における第一の成果である。 第二に、メソの視点からの考察としては、自然保護と鉱山開発いずれの分野においても、住民行動や地域構造が受けた変化(恩恵)は、事業の進めかたや財源などによって大きく異なることがわかった。この点の研究は今後さらに深め、比較研究の手法によって今後も追究する余地がある。今回の研究では、大きな目標として掲げたわけではなかったので、今後の課題としたい。 第三に、対象地域における小規模砂金採取と民間人道支援について、詳しい調査を進めることができた。砂金採取についてはまだ整理しきれていない論点も多いが、民間人道支援については、伝統文化の外観保持に重点を置くあまり、天然資源の持続や文化の象徴的側面を損なうおそれがあることが明らかになった。このことは、2015年度に開かれたシンポジウムで発表したほか、期間延長によって2016年度までくり越した財源によって、2016年度の国際学会でも発表する。日本語論文1本と英語論文2本も刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で記したように、マクロの分析とミクロの分析の双方において一定の成果が得られ、全体的に当初期待された成果はあげることができたと考えている。ただ、両者をつなぐメソレベルの分析はまだ十分とは言いがたく、あらたな研究課題のもとで追究するのがよいと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在執筆中の日本語論文1本と英語論文2本の刊行にむけて、準備を進める。3年の期間で成果をあげられなかったメソレベルの分析に関しては、あらたな研究課題のもとに解明を進めていくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度初めに計画を変更し、短期の現地調査をおこなうことにした。結果的には多目的の渡航に合わせ、費用が安くすんだため、国際学会発表のために渡航する余裕ができたが、このことが判明したのは年度後半に入ってからで、適当な学会の受付はすでに締めきっていた。
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次年度使用額の使用計画 |
補助事業期間延長の申請をおこない、平成28年度に開催される国際学会で研究発表をおこなう。また、そのことにより、研究期間内に予定していた計画を完遂する。
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