研究課題/領域番号 |
25360036
|
研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
佐藤 創 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (40450514)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | インド / 南アジア / 公益訴訟 / 環境 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
二年度目である平成26年度においては、初年度において進めた訴訟の形式および内容という観点からの整理を前提として、次の段階として設定した二つの課題に取り組んだ。第一に、インドにおける公益訴訟の社会経済への影響を考察するために適切なケースの選定を進めること、第二に、公益訴訟の社会のなかでの位置づけのインド固有の特徴と普遍性とを理解するため、他の南アジア諸国および旧英領アジア諸国における公益訴訟の状況と比較して考察することである。 第一の、ケースの選定においては、興味深い発見があった。債務労働や監獄における拷問などの社会的弱者層救済にかんするケースからはじまった公益訴訟において、環境に関する問題が大きな比重を占めるに至っていることはすでに指摘されてきた。ただし、この環境にかかわるケースでは、とくに21世紀に入り、台頭する中間層の利害や関心に沿った訴訟が増えており、場合によっては社会的弱者層の利害に反して、公益訴訟が進められていると思われるケースもあることが判明した。また、21世紀に入り、腐敗問題にかかわる公益訴訟が増えていることが確認できた。そこで、こうしたケースにも目を配って絞り込みを進めた。 第二の、インド固有の特徴を理解するという課題については、パキスタンおよびバングラデシュについてはすでに調査を行ったことがあるため、研究と情報の蓄積がないスリランカとネパールについて詳しく調べ、またシンガポールとマレーシアについても調査に着手した。スリランカ、ネパールは憲法にインドと類似した令状訴訟に由来する司法部の権限が定められており、インドをモデルとして公益訴訟が展開していることが確認できた。ただし、その展開の仕方はインドとは非常に異なっており、その理由を考察することがインド公益訴訟の固有性と普遍性をさらに明らかにすることに貢献すると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
21世紀に入りインドの公益訴訟に新たな展開が起きていると解釈すべき感触をえたために、ケースの選定基準について再考する必要があると考え、進行にやや遅れが生じた。平成26年度中に、選定したケースについて現地でのインタビューまで終える予定であったが、文献調査までにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度においては、第一に、文献調査を行った社会的・経済的影響の顕著に大きかったケースについて、現地調査を実施して研究を進めること、第二に、インド公益訴訟の社会的意義の固有性と普遍性をスリランカなど他国と比較して考察を進めること、第三に、その発見を国内外の学会にて発表し、研究を深めること、を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
二年度目に予定していた現地調査の一部を三年度目に実施することにしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
三年度目に現地調査を複数回実施する予定である。
|