本研究は、インドにおいて近年急増する低所得地域農村からの出稼ぎ労働移動が農村労働市場にもたらしたさまざまな変化を検討し、農村の経済格差に与えた短中期的な影響を分析を分析するものである。具体的にはインドの最貧困州であり最大の季節労働者送り出し州であるビハール州農村を調査し、出稼ぎ労働者の多い地域とそうでない地域、また出稼ぎ労働(経験)者のいる世帯とそうでない世帯の経済水準とその変化を検証する。これらの分析において、出稼ぎ労働移動が農業・非農業賃金の動向や女性の労働参加などの農村労働市場に与えた影響に注目し、経済成長したでの経済格差を生み出すメカニズムを明らかにすることである。 前年度までに1000世帯を対象とした農村家計調査結果を分析した結果、①2000年代以降の出稼ぎ労働移動の加速度的な増加、②その主要な要因として人口増、男子均分相続制度による農地の小規模化、州外の雇用に関する情報を得られるようになったこと、③なかでも低カースト層の州外への出稼ぎ労働移動の増加、④世帯の農地所有面積は出稼ぎ労働移動の有無に影響を与える、ことが判明した。 最終年度は、出稼ぎ労働移動の農村世帯への経済的な影響を分析するため、4県11村の主要なカースト居住区(各村2~3カースト)を訪問し、フォーカス・グループ・ディスカッションを行った。各村、カーストで出稼ぎ労働移動の状況、そのインパクトについて幅広く定性データを収集することができた。
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