研究課題/領域番号 |
25360041
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
牛山 佳幸 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (60176659)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 女人禁制 / 修験道 / 山岳霊場 / 女人堂 / 比丘尼石 / 浄穢思想 / 大姥信仰 / 山岳信仰 |
研究実績の概要 |
本研究は山岳霊場における「女人禁制(女人結界)」の成立事情や歴史的意義の解明を目的とするものであり、その前提として全国すべての山岳霊場を対象に、その指標となる女人堂・比丘尼石や関連する伝承等を網羅的に検出して、基礎的なデータを作成することを目指したものである。本年度も当初の研究計画に沿って、各地の山岳霊場の史料を検索する作業を継続したが、文献史料上で大きな成果があったのは伯耆大山や肥後阿蘇山の場合で、ここに残る伝承・説話に修験者も山中では仏教の戒律に背く破戒行為は厳禁であった事実を示すものが見出され、一般寺院(僧寺)と山岳霊場とは「女人禁制」の背景・理由を等しくしているとの予測を裏付ける証拠が得られたことである。 現地調査では出羽鳥海山と駿河・甲斐に跨る富士山に関わる山岳霊場や史跡を訪れた。前者は九月の山岳修験学会(会場は秋田県羽後本荘市)の折の巡検で、矢島・吹浦・蕨岡などの修験拠点を調査し、各々の修験組織によって女性の行者の待遇に違いのあることや、登山口によって女人の登山制限がされた地点(女人堂設置場所)の標高が異なることが判明したことである。このように同じ山岳でも登山ルートによって女人禁制のあり方に相違があることは、富士山の北口本宮(山梨県富士吉田市)の調査でも明らかとなり、今後の残された事例検討の際のヒントになりうるものと考えている。 研究成果の公表という点では、千曲川流域学会主催のシンポジウム{里山の精神史」において、「信濃における里山系寺院と修験道をめぐって」の題目で基調講演を行ったほか、継続して進めてきた戸隠山の存在形態に関わる論考を、論集『戸隠信仰の諸相』(戸隠神社刊行)に寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画の通り、山岳霊場の対象範囲を東日本から西日本に広げて、文献史料の検索作業を続けたが、昨年度の遅れがやや響き、全体として二年目の目標を達成するには至らなかった。対象範囲がやや広過ぎたのが主たる理由だが、調査対象を絞り込むことで、本年度中にはできる限り遅れを取り戻したい。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度に当たるため、原則として当初の計画に沿って、主として西日本の山岳霊場を対象に、女人堂や比丘尼石の有無、女人伝説の存在等の事例収集に努めるべく、史料の検索作業を続ける予定である。現地調査としては、富士山の駿河側の登山拠点(富士宮口・村山口)、および「女人禁制」が現在も続く美作後山(岡山県)の調査を実施する予定である。また、併せてこれまで収集した各地の事例を整理・分類する作業を開始し、修験道・修験者と持戒意識・浄穢思想の関わりを明確にするとともに、一般寺院(とくに禅律寺院)の寺僧との相違点も鮮明にしつつ、最終報告書の執筆に向けて研究を推進するつもりである。なお、研究達成度の遅れの理由として、悉皆調査を意図したことが要因と思われるため、ブロック毎の代表的な山岳霊場に絞り込むといった方向に転換することを、対応策として考えているところである。
|