平成29年5月21日一橋大学で開催された日本西洋史学会年次大会において、研究成果の一部を利用してYWCAや黒人女性の公民権運動への参加について発表した。なお、本研究の成果は、基盤(B)の研究につながるものであり、研究グループの中で西崎は黒人女性と既存の団体の公民権運動へのかかわりを再評価することになった。 本研究の最終報告書「公民権運動におけるNCNWの役割~ドロシー・ハイトを中心に~」を、年度末にまとめて印刷した。以下にその結論部分をまとめる。 現実主義者ベシューンによって1935年に創設されたNCNWは、常に黒人女性の団体の中央統括団体として、黒人女性の生活支援とそれを可能にするソーシャル・アクションを全国運動として行うことや、連邦政府に働きかけることを得意としていた。公民権運動期も、Pig Farmなどのユニークな手法で南部の黒人女性たちの生活を助けるとともに、Wednesdays in Mississippi(WIM)で知られる北部の白人特権階級を活用した広報活動を行った。このWIMは、ベシューンと江レノア・ローズヴェルトとの関係の相似形ともいえるドロシー・ハイトとポリー・コーワンによって計画・実施されたものである。 やや古風な協調路線ではあるが、フリーダム・サマーの激動の中で、ラディカルな手法のみではなしえなかった、「異なった社会階層や人種間の相互理解や協力関係の形成」をNCNWが担ったと言ってよい。それは、ドロシー・ハイトというYWCAにも大きな影響を持つ人物がリーダーシップを発揮したゆえに、実現したと言ってもよい。
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