研究実績の概要 |
日本の専門職論においては、その「専門職」の意味が西洋社会特に英米の"profession"として議論されてきた。また、専門職大学院もアメリカのプロフェッショナルスクールを模して設立されたが、入学希望者減少など不振にあえでいる。果たして現代日本における「専門職」の意味とは何か、専門職と学歴、専門職大学院に対する人々の認識はどのようなものかを探るべく、20歳から69歳の日本全国の男女1,086人に調査を実施した。その結果、「高等教育」に裏付けされた職業というアメリカにおける専門職の特徴とは異なり、現代日本においては、国家試験合格等をもって取得しうる確固とした「資格」が専門職としてのメルクマールであることが示唆された。専門職に大学までの学歴が必要であるとする割合と学歴は関係ないとする割合は拮抗しており、大学院までの学歴、高等教育が必要であるとする比率は非常に低いということも、この認識の仕方を裏付けているものと思われる。 大学院に対し、このような認識が広く共有されていることをふまえ、法科大学院をはじめとする専門職大学院の不振と今後の課題についても検討した。その結果、法科大学院は、少子化に対応する大学の生き残り対策の一つとして関係者が支持し、規制緩和の流れの中、法学部を有する全国の大学が設立に乗り出した経緯が確認された。また、政財界もグローバル化の競争にさらされる中、企業法務の強化の必要から法曹人口の増加の必要を訴えた。法曹界は裁判官、検察官、弁護士それぞれの思惑が異なった。同床異夢のまま法科大学院は設立されたが、専門職大学院と資格との連動性の強化、奨学金の充実、専門職の多様なキャリア展開等を課題として提示した。 最後に法科大学院設立後、本研究企画の問題意識とは異なり法曹の女性比率が上がっているが、組織内弁護士が多いことは示唆に富み、その背景、現状と課題について今後検討していきたい。
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