27年度は、5月に首都大学東京で開催された日本法社会学会学術大会の「企画関連ミニシンポジウムⅡ 権利の実質化の条件」において、「『権利アプローチ』と個々人のエンパワメント~地域的文脈を踏まえた権利支援の現場から」と題する報告をおこない、本研究の成果に関し、学術的な議論を深める機会を得ることができた。同報告では、権利アプローチの実践例として、アフリカで開発され世界各地で広く実施されてきているHIV/エイズ予防研修「ステッピング・ストーンズ」の成果と課題を検証し、権利アプローチが具体的な効果を上げるために必要な条件を検討した。また、報告内容については、『法社会学第82号』において論文として公表した。 さらに、これまでに進めてきた文献研究を引き続きおこなうと同時に、権利アプローチの具現化に向けた実践的な枠組の構築に向けて、インドにおけるフィールドワークを実施した。インドでは、マハーラーシュトラ州プネー郊外に拠点を置き、権利アプローチに基づいて、健康の問題を切り口に、様々な分野における農村女性のエンパワメントのために活動しているNGOスタッフの女性たちへの聞き取り調査を実施した。調査からは、「文化」や「伝統」を理由とする「権利」への抵抗と反発に対する女性たちの戦略的対応について重要な知見を得ることができた。これらの成果を分析すると同時に検証を加え、本研究の目的である「権利アプローチ」に基づいて女性のエンパワメントを実現するための実践的枠組の検討と構築に向けた作業をおこなった。
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