本研究の目的は、人体の中枢器官をめぐる論争史をとおしてみた西洋古典古代の人間観の展開とその特質を、古典ギリシア語・ラテン語の原典資料等の内容分析をとおして、文献学的な視点に立って実証しようというものである。おもに、ヒッポクラテス(c.460-375 BC)の時代にあたる紀元前5世紀からヘレニズム期にいたる論争史の文脈において、人体の中枢器官の位置、構造および機能の解明という重要なテーマをめぐって、ギリシア医学と同時代の哲学がはたした役割を明確化することによって、両者の影響関係の内実を明らかにすることが、本研究の主眼とするところである。
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