研究課題/領域番号 |
25370005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
横山 幹子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 講師 (40302434)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 哲学 / 知覚の哲学 / 素朴実在論 / 錯覚からの議論 / 選言説 / 表象説 / 志向説 |
研究概要 |
本研究では、選言説の採用により知覚の誤り(特に幻覚)から本当に素朴実在論を擁護できるのかを、表象説との比較で検討し、現実と虚構の区別ということも視野に入れながら、真正な知覚や知覚の誤りはどのように説明されるべきかを明らかにすることを目的としている。 平成25年度は、主に、素朴実在論、選言説、選言説による素朴実在論擁護についての選言説論者の考えを整理し、そこにおける問題点を検討した。そして、選言説の中でもFishの考えを取り上げ、その考えが、幻覚からの議論から素朴実在論を擁護するために、他の考え、たとえば、志向的対象を考えるSmithの説よりも劣っているということはできないということを明らかにした。また、知覚の選言説で素朴実在論を擁護するためには、真正な知覚的経験とは異なるはずの幻覚的経験をどのように説明するかが大きな問題となるので、選言説の立場から、否定的認識的性質によって幻覚的経験を説明しようとするMartinの考えを取り上げ、その主張とそれに対する批判を検討し、「非人称の区別不可能性」を幻覚的経験の説明として使うために留意すべき点、検討しなければならない点を明らかにした。それと並行して、表象説に関する文献を収集し、内容の整理を始めた。さらに、現代の心理学で知覚と知覚の誤りについてどのように説明されているかの概略を整理した。 以上の研究の意義と重要性は、さまざまな装置の出現により知覚経験において今まで以上に現実と虚構の区別が難しくなっている現代において、われわれの日常からかけ離れた知覚の理論をつくるのではなく、素朴実在論という、われわれの日常的な知覚についての考えを維持する方向で、知覚の誤りについて検討しようという点にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画では、主に、素朴実在論、選言説、選言説による素朴実在論擁護についての選言説論者の考えを整理し、それを検討することを目指していた。そして、それに関しては現在までで一定の成果を出し、その内容を、雑誌論文、学会発表等で公開することができた。その雑誌論文や学会発表の内容は、Webサイトで見ることができる。 また、それと並行して、表象説に関する文献の収集も着実に行うことができた。そして、表象説についての文献の内容の整理にも取り掛かることができた。 さらに、心理学関係の文献の収集もはじめ、現代の心理学の領域で、一般に、真正な知覚や錯覚等の知覚の誤りについて、どのような実験に基づき、どのように考えられているかを概観した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降も、引き続き、選言説、表象説、知覚についての心理学の文献を収集し、それらの理解・整理に取り組む。そして、それらの整理に基づき、選言説と表象説の対立点を明確化にする。さらに、選言説と表象説の比較検討の際に役に立ちそうな心理学関係の知見、それに関する実験等としてどのようなものがあるかを調べ、それらを整理する。そのうえで、選言説と表象説を比較検討し、真正な知覚や知覚の誤りはどのように説明されるべきかを明らかにする。
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