研究課題/領域番号 |
25370006
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
今村 健一郎 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (50600110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 所有 / 労働 / 刑罰 / 人格 / 身体 / 自由 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画調書に記したように、ロックの刑罰論について、ロックの著作や国内外の研究や研究代表者自身の過去の研究を踏まえつつ、検討を行った。そして、その作業を進める中で、近代イギリス哲学においてロックと並び称されるデイヴィッド・ヒュームの刑罰論を、ロックの刑罰論と比較対照させるべく、検討しておくことが、本研究に広がりを与える上で有意義であると考えるにいたった。このような経緯から、ヒュームの刑罰論についても検討を行った。その結果、ヒュームの刑事責任論の骨子は以下のとおりであるとの知見を得た。
ヒュームの刑事責任論:社会的に有害な性格や行為は、有意的か否かを問わず、自然と人びとの非難の対象となる。しかし、非難の対象となる性格や行為の全てが刑罰の対象となるのではない。それらの内、非難や刑罰によるコントロールが有効なもの、すなわち有意的なものだけが刑罰の対象となる。しかるに、概して性格は非有意的で行為は有意的である。よって行為のみが刑罰の対象となる。
このようなヒュームの刑事責任論は、「刑罰によって犯罪者の性格を改善し再社会化することはできない」という彼の考えを背景にしている。この点において、ヒュームの刑罰論は、犯罪者が刑罰を経て更生する可能性を認めるロックの刑罰論と著しい対照をなしている。また、ヒュームの刑罰論からは、犯罪者が置かれた社会的境遇や、犯罪を生み出す所有の不平等に対する配慮が汲みとれるように思われる。そして、これらの配慮は、その重要性にもかかわらず、一見したところ、ロックの刑罰論には見出いだされないようである。このようにヒュームとの比較を行うことは、ロックの刑罰論の限界を知る上で、大いに有効であると考える。 なお、以上の研究成果の公表を、ヒューム研究学会第25回例会(8月29日、国際基督教大学)において行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先に「研究実績の概要」にも記したように、ロックの刑罰論の限界を明確にすべく、ヒュームの刑罰論を検討し、その上でロックの刑罰論との比較を行った。この作業自体は有意義かつ必要であり、そしてまた、極めて順調に遂行できたのだが、ロック刑罰論の研究成果の公表を果たすことができなかった。そのため(3)と評価した。研究代表者の移動(埼玉大学から愛知教育大学へ)に伴う諸事に時間と労力を割かねばならなかったことが、その主たる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行なったロックの刑罰論に関する研究の成果を2015年度の『愛知教育大学研究報告. 人文・社会科学編65輯』において公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の移動(埼玉大学から愛知教育大学へ)による研究環境の変化とそれに伴う体調不良により、当初の研究計画にやや遅れが生じた。そのため、予定していた研究成果発表のための国内旅費と図書購入のための物品費に関して次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
設備備品費 500000円(内訳:哲学関係図書購入[60冊×5000円]・法学関係図書購入[40冊×5000円]) 消耗品費 20000円(プリンタカートリッジ・プリンタ用紙・PCデータ記憶媒体の購入費用) 国内旅費 100000円(日本哲学会および日本イギリス哲学会での研究成果発表に伴う旅費)
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