従来の道元研究は、宗学(道元を開祖として絶対視した上で成り立つ曹洞宗門の道元研究)と和辻哲郎に端を発する宗門外の哲学・思想研究者による道元研究が中心であった。これらは、多くの成果を上げてきたものの、硬直化した解釈に陥ったり、また、自己の哲学・思想的背景を短絡的に道元に当てはめたりという傾向も見られた。本研究ではこのような問題を解決すべく、(1) 道元の思想構造を、『正法眼蔵』の諸巻に対する厳密なテクスト・クリティークに基づき、その独自の世界把握に着目してテクスト内在的に解明した。(2)(1)を基盤とし大乗仏教思想史という観点から道元の思想的意義を多角的に解明した。
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