1888(明治19)年から翌年にかけて、東京大学で吉谷覚寿(1843-1914)が行ったインド哲学(仏教学)、および島田重禮(1838-1896)による中国哲学の講義内容を筆記した高嶺三吉の直筆ノートを翻刻、分析した。その結果、これらの講義には、二つの思想的意義があることが明らかとなった。 一つ目は、西洋思想を重視する傾向にあった当時の状況に対し、仏教と中国哲学を西洋哲学に比肩するものと位置付けるための基礎を与えたという点である。第二に、受講生の一人であり、後に近代を代表する宗教哲学者、仏教思想家として活躍した清沢満之(1863-1903)の思想形成における素地となったという点である。
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