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2013 年度 実施状況報告書

アリストテレス主義批判としてのヒュームの知識論

研究課題

研究課題/領域番号 25370014
研究種目

基盤研究(C)

研究機関三重大学

研究代表者

秋元 ひろと  三重大学, 教育学部, 教授 (80242923)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードホッブズ / ベーコン / 知識論
研究概要

本研究は,西欧近世におけるアリストテレス主義の継承と批判という観点から,ヒュームの知識論の再検討と再評価を行うことを目的とする。
研究初年度にあたる25年度は,ベーコンとホッブズの知識論を取り上げ,両者の比較検討を通じて,17世紀のイギリスにおいてアリストテレス主義の継承と批判がどのように行われたかを明らかにした。
具体的には,ベーコンとホッブズは,「原因の探究」だけでなく「結果の産出」という観点から知識を特徴づけることによって,ともに観想知を知識の規範と見なすアリストテレス主義の知識論を批判して,制作知ないし技術知を知識の規範と見なす知識論を展開したこと。しかし,ベーコンがアリストテレス主義のオルガノンに代わる新オルガノン(帰納法)を提唱したのに対して,ホッブズは,演繹法(三段論法)を中心とするオルガノンの伝統を継承したこと。そして,この相違は,二人の制作や操作の捉え方の相違と関係していること。すなわち,自然学の革新を目指して知識論を展開したベーコンが問題ににするのは,自然のプロセスへの操作的関与である。それは,自然物を対象として行われる具体的・実際的な操作である。それに対して,幾何学をモデルとして知識論を展開したホッブズが問題にするのは,図形の制作であり,図形の作図に関する操作である。それは,抽象的・理論的な操作なのである。
このように,ベーコンとホッブズには,アリストテレス主義の継承と批判の仕方に関して相違が見られるが,ベーコンは近代の実験科学に通じる自然学のある面を的確に捉える知識論を,ホッブズは幾何学のある面を的確に捉える知識論を展開した。そして,ホッブズは,政治学を幾何学的展開へと向かったのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ベーコンとホッブズの比較を通じて,アリストテレス主義の批判と継承がどのように行われたかを明らかにするという計画をおおむね達成することができた。
ベーコンとホッブズの比較に際しては,当初,因果関係と記号関係の捉え方という観点からの比較を計画していた。この点に関する研究にやや不十分な点が残ったが,それに代わって,制作や操作の概念の捉え方というより本質的な観点からの比較を行うことができた。
因果関係と記号関係の捉え方という観点からの比較については,必要に応じて,今後の研究で補うことが十分に可能である。

今後の研究の推進方策

最終年度のヒュームの知識論の検討に向けて,26年度は,当初の計画通り,大陸の哲学者とりわけマルブランシュを取り上げ,マルブランシュとヒュームの因果論の比較検討を進める。
マルブランシュの因果論は,機会原因論として知られるが,これは,彼がアリストテレス主義批判として打ち出した考え方である。すなわち,アリストテレス主義の因果論が,被造物に真の原因として作用する力を認めたのに対して,マルブランシュは,被造物の作用は,結果が生起する「きっかけ」,すなわち「機会原因」に過ぎず,真の原因ではないとしたのである。しかし,マルブランシュは,神だけには真の原因として作用する力を認めた。それに対して,ヒュームは,神にも真の原因として作用する力を認めなかった。つまり,ヒュームの因果論は,マルブランシュによるアリストテレス主義批判を徹底したものと見ることができる。このような見通しのもと,マルブランシュの因果論の検討を行い,ヒュームの因果論との比較検討を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] scientia と potentia ―ベーコンとホッブズの知識論―2014

    • 著者名/発表者名
      秋元ひろと
    • 雑誌名

      『論集』三重大学哲学思想学系・哲学倫理学教室

      巻: 16 ページ: 78-93

  • [学会発表] ホッブズの知識論2013

    • 著者名/発表者名
      秋元ひろと
    • 学会等名
      哲学会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      20131026-20131026
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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