本研究は,アリストテレス主義の批判と継承という観点からヒュームの知識論について検討し,以下の諸点を明らかにした。因果論を中心とするヒュームの知識論が,被造物に原因としての力能を認めないという点で,スコラのアリストテレス主義を批判したマルブランシュやバークリの因果論を継承していること。実体論を中心とするロックの因果論が被造物に原因としての力能を認めるという点で,アリストテレス主義を継承していること。したがって,イギリス経験論をロック,バークリ,ヒュームのトリオの仕事と見なす標準的な哲学史記述は書き換えの必要があること。
|