研究課題/領域番号 |
25370015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30155569)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バークリ / ロック / 観念 / 観念論 / 物質 / 経験的対象 / 自然法則 / 神 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、バークリの観念説の再検討を進めた。バークリは、ロック的三項関係のうちの観念と心との関係を例えばesse is percipi という表現のもとに保持し、その一方で「似たもの原理」等々を用いてロック的「物そのもの」を否定しようとする。しかも、「直接的知覚」の対象となるものとしての「物」、つまりロック的な「経験的対象」に関しては、そのあり方とさらなる諸観念の生起との関係を「自然法則」として捉えようとする。もとより、バークリにとっても、ロック同様、「経験的対象」は観念の集合体にほかならず、したがってバークリがここで言うところの「自然法則」は、観念間に認められる記号的法則性にほかならない。ヒュームを想起させるこうした自然法則の捉え方を解明し、それをロックの場合と比較することによって、バークリの観念説の論理のなお一層の明確化を図ることが平成27年度の研究の主眼となった。 また、バークリが物質に代えて持ち出す「神」が、どのような論理のうちにあるかを、併せて明らかにするよう試みた。ロックの観念説でも、神は重要な役割を果たすが、バークリは、物質ないし物そのものを拒否することと引き替えに、神に対してより重大な役割を担わせる。バークリにおけるこの神の役割に検討を加え、物質否定によって空白になった論理空間が、その神への役割付与によって十全に満たされたと言えるかどうかについても、併せて検討した。 上記に加えて、「物」(経験的対象)の「外在性」の認知に関するバークリの見解の再検討も進めた。『新たな視覚理論のための試論』における彼の議論は、知覚に関するロックの見解をさらに発展させたものとして捉えられるが、その議論においてバークリが行う外在的認知の説明が、外界を心の中にある観念からなるものとする彼の見解とどのようにかみ合っているかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究実施計画に沿って予定通りの研究を十全に進めることはもとより、その成果を基に、次年度以降に予定されているカントの表象説の読み直しの準備を十二分に行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果は、すでに、次年度に進める予定のカントの再検討を行う上で十分なものとなっている。次年度は、予定通り、カントの表象説の全面的見直しを行う。そこでは、従来カント研究者の間で十分に確認されていなかった、カントと彼に先行するロックやバークリ、あるいはデカルトとの関係を再考し、それによって、カントの「超越論的観念論」の論理が西洋近代の精神史の中でどのような位置に立つかを明らかにするよう試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の後半における研究の進捗が著しく、必要書籍の取り寄せ購入につき、予定との若干の齟齬が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度の最後に購入が望ましいと判断された書籍の、早急の購入に充てる。
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