研究課題/領域番号 |
25370015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30155569)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カント / ロック / バークリ / ヒューム / 観念 / 表象 / 超越論的観念論 / 『純粋理性批判』 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究成果を念頭に置きつつ、まず、カントの観念説(表象説)の読み直しを行った。その基本的方向性はすでに 'Locke's "Things Themselves" and Kant's "Things in Themselves"' (2008) に示していたが、今年度の研究ではさらに独断的観念論や懐疑論的観念論に対するカントの批判の真意を考察するとともに、「心の中」の意味を再度明らかにするよう試みた。その結果、ロックの遺産の継承とその論理の変質過程の実際が、より明確になった。 本年度は、上記の予定されていた作業に加えて、カント研究をさらに進めた。『純粋理性批判』に見られるカント哲学を、科学史も含めた西洋精神史の文脈の中に置いて見たとき、いくつかの歪んだ論理が明らかになる。その実際を、伝統的論理学の歴史の確認も含めて、明確にするよう試みた。それと同時に、『純粋理性批判』が全体として「超越論的観念論」の論理をどのような形で示しているかを、再度明確にするよう試みた。その結果、例えば、カントの「構成」の考え方に見られる一般観念説の論理が、ロック、バークリ、ヒュームのそれとの比較においてどのような特徴を持つかが明らかとなり、それと密接に関わる彼の「図式」論の意味の明確化を図ることができた。 こうした作業とともに、ロックの反生得説がしばしば「タブラ・ラサ」という言葉とともに言われていることの是非を、プラトン・アリストテレスにまで遡って検討し、『人間知性論』で実際に使用された「白紙」という言葉の歴史的背景を探る作業も、あわせて進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、「物自体」をめぐるカントの論理に焦点を当て、それと表象の世界としての心との関係を明らかにするよう努めるとともに、デカルトやバークリとの関連と差異に目を向けることが目指されていたが、実際に進められた研究では、それらの問題への対処とともに、カントの判断表やカテゴリー表、また、それらと関連する諸原則を、論理学史を踏まえながら検討し、カントの「不当な」論理を抉剔するところまで考察を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
カント哲学の批判的研究をさらに進めるとともに、当初の計画に従って、本研究の成果が基礎づけ主義、自然主義、表象主義をめぐる今日の論争にどのような光を投じるかを再度考察する。これによって、本研究に拠る近代観念説の再検討が、新たな人間観に新たな支えを与えることが示唆されるであろう。
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