研究課題/領域番号 |
25370016
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
網谷 祐一 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00643222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 理性 / 進化 / 二重過程説 |
研究実績の概要 |
交付申請書の研究計画欄においては、本研究における三つのプロジェクト――1.二重過程説の総説的論文、2.理性の進化についての著書、3.マキャベリ的知能仮説などについての検討――について記した。2014年度は主に1.および3.について具体的な研究実績があったので述べる。 1.研究代表者は二重過程説の総説的論文("A Tale of Two Minds: Past, Present, and Future")をAnnals of the Japan Association for the Philosophy of Science誌に投稿し、いくつかの点を改訂することを条件にアクセプトされた。現在はコメントに基づく改訂作業中である。それに関連して、交付申請書で述べた、人間が推論時に用いる簡便法(ヒューリスティックス)の進化についての論文("The Natural Frequency Hypothesis and Evolutionary Arguments")がMind and Society誌(Springer社発行)にアクセプトされた。また本研究計画の着想の源泉の一つとなった二重過程説を種問題に応用する論文"Prototypical Reasoning about Species and the Species Problem"もBiological Theory誌(Springer社発行)にアクセプトされた。したがって、1.については2014年度で研究計画で予定した研究成果がほぼ得られたといえる。 3.マキャベリ的知能仮説などについての検討:交付申請書では、社会的能力の進化と二重過程説が交差する地点として感情知能(emotional intelligence)に着目する計画を挙げていた。これについては2014年8月に生物学基礎論研究会(於愛媛大学)にて「熟慮的理性の進化」と題して発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の研究進捗状況は、「研究実績の概要」欄で述べた三つのプロジェクトの内、二重過程説の総説論文他のプロジェクトで顕著な成果があった。以下項目ごとに進捗状況を述べる。 1.二重過程説についての論文。「研究実績の概要」欄で述べたように、総説論文を国際誌(Annals of the Japan Association for the Philosophy of Science誌)に投稿し、「訂正の上掲載可」という判断になった。また交付申請書でこのプロジェクトに関連する研究として記した二つの論文がMind and Society誌、Biological Theory誌というそれぞれ権威のある国際誌に掲載されることになった。したがってこのプロジェクトについては当初の計画で記した目標はほぼ達成された。 2.理性の進化についての著書。おおむね順調に進行している。現在は当初の予定分量の9割強まで執筆が進行しており、結論部の執筆を残すのみになっている。 3.マキャベリ的知能仮説などについての検討:「研究実績の概要」欄で述べたように、昨年はこのテーマで全国規模の研究会にて発表を行った。現在はその際の議論をもとに発展を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.二重過程説についての論文:先述の論文について改稿版を送付すれば、正式に掲載可とされる見込みである。 2.理性の進化についての著書:時間的に可能であれば専門家による私的な査読を受けての修正の後、今年中に脱稿し、来年前半の出版を目指す。 3.マキャベリ的知能仮説などについての検討:昨年の生物学基礎論研究会にて発表したものを今年8月にフィンランド・ヘルシンキで行われる The 15th Congress of Logic, Methodology and Philosophy of Scienceにて発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は海外出張用経費(交通費・宿泊費など)として25万円を計上しており、実際に2014年8月にポーランド・カジミエシュ・ドルニィ村に出張し研究発表などを行った。ところがこの経費が総額40万円近くになった。これは申請時の勤務地(京都大学)よりも現在の勤務地(東京農業大学生物産業学部=北海道網走市)が遠方にあるため、交通費・宿泊費が増大したためである。
研究計画では2015年度も海外出張を予定しているが、2015年度の予算総額が40万円であるため、消耗品費などを考えるとそれ以上の予算を残しておくことが研究業務のスムーズな執行に不可欠であり、それに配慮した予算執行になった。これが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
国外出張については、「今後の研究の推進方策」で述べたように、フィンランドで行われる科学哲学の国際会議にて研究発表を行う予定である(約40万)。残りは消耗品(図書)として22万円ほどを予定している。
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