研究課題/領域番号 |
25370019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 毅 神戸大学, その他の研究科, 教授 (70222304)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ライプニッツ / 生命の哲学 / 17 世紀の哲学 / 生物学 / 実体形相の復権 / モナド / コルドモワ |
研究概要 |
25年度は、研究の第一段階として、17 世紀の哲学と自然学の文脈からライプニッツの「生物学」と生命の哲学の歴史的文献研究を行った。 特に、アルノーとの往復書簡、『人間知性新論』などの基礎的文献の研究から、ライプニッツが、アリストテレスとスコラの伝統を活かし、「実体形相の復権」を唱えたことの意義を「有機的物体」のモデルとしての「テセウスの船」に関するライプニッツの問題解決から概念分析的に検討した。また、いわゆる「モナド」を『モナドロジー』で「自然の真の原子」と呼んだ点に着目し、デカルト派でありながら、原子論の自然学を認めたコルドモワとそれに関するライプニッツの遺稿でのコメントに注目した文献学的研究をおこない、国内の学会で発表した。これは、論文投稿中のものと準備中のものがある。 また、この問題に関連して第5回ライプニッツ協会大会開催時にあわせて、Divine Machine, Leibniz and the Sciences of Life. Princeton University. Press.2011.の著者である、J. Smithパリ第7大学教授を招聘し、その講演「ライプニッツとメカニズムの神学」や他の会議で議論を重ねることで、ライプニッツの「生物学」と生命の哲学に関する世界的な研究状況を確認するとともに、多くの重要な知見を得ることができた。講演の翻訳は『ライプニッツ研究』第3号に掲載予定であり、我が国のこの分野の研究者にも益するところが大きいと考えている。 これらとも関連するが、依頼を受けて、ライプニッツとスピノザの哲学に関するこれまでの研究成果をもとに、『思想』と日本哲学会の『哲学』に論文を執筆し、『思想』の座談会などでも発言した。スピノザの自然哲学との差異も、ライプニッツの初期近世生物学と生命の哲学の位置と特徴を解明するうえで重要であることが認識される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ライプニッツの生物学と生命の哲学の研究」と題する研究は、近年のライプニッツ研究の「生物学的転回」状況と現代哲学における「生物学の哲学」の進展とを踏まえ、「生物・生命とは何か」という基本問題を歴史的かつ現代的に問い直すことを目的とするが、[1]ライプニッツの生物学と生命の哲学の歴史的文献研究:17 世紀の文脈から、[2]ライプニッツの生物学と生命の哲学の再構成:現代生物学・生物学の哲学との比較、[3]ライプニッツ存在論の再解釈:「モナド」・「身体」・「個体」という段階を踏んでいく。25年度はこの[1]と[2]の移行に関わる重要なポイントをライプニッツの「実体形相の復権」と「記憶」概念のうちに見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、5月にルーマニアの国際会議Oltenia Colloquium in Early Modern Philosophy: "Leibniz's Controversies on Substantial Forms" University of Craiova, Romaniaで“Substantial Form and Atomism From Leibniz’s remarks about Cordemoy”を発表予定であるほか、8月の京都での国際会議the Second Conference on Contemporary Philosophy in East Asiaと9月に大阪で開催されるネオプラとニズム協会での発表を予定しており、これらの場を利用して、特に[2]ライプニッツの生物学と生命の哲学の再構成:現代生物学・生物学の哲学との比較の段階の研究へと進みたい。昨年度から進めてきた現代の生物学の哲学の「還元主義」の問題と進化論も念頭においた発生学の問題にライプニッツの観点がどれほど生かせるかを検討し、これらの機会を利用して発表し、論文投稿したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定されていた海外出張が実施できなかった。 今年度は積極的に海外で発表を行う予定である。
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