研究課題/領域番号 |
25370022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山本 與志隆 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50294781)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイデガー / ユンガー / 労働 / 現代の危機 / 存在の問い / 形而上学 / 存在史 / 別なる始まり |
研究概要 |
25年度は関西ハイデガー研究会への参加を通して、課題についての研究が大幅に進捗した。特に10月27日に行われた第9回研究会では、日本現象学会のワークショップ「ユンガーとニヒリズムの今」のためのプレ発表として、竹内綱史氏、有馬善一氏とともに、「ユンガーとニヒリズムの現在」の発表を行うことができた。ここでは京都産業大学の川井全弘教授より有益な教示を得ることができた。 そして、11月に名古屋大学で開催された、日本現象学会第35回研究大会では、松本啓二朗氏をオーガナイザとして、ワークショップ「ユンガーとニヒリズムの今」に、竹内氏、有馬氏とともに参加し、「ユンガーとニヒリズムの現在」の提題を行った。そこでは熱心な参加者と議論し、様々な観点からニヒリズムの今について考察することができ、問題点の理解を深めることができた。 2014年3月末から4月初めの海外出張では、ヴッパタール大学にP.トラヴニー教授を訪ねた。ハイデガー研究の文脈で現在最も重要な話題となっている「ハイデガーとユダヤ人問題」について、その中心をなしているトラヴニー教授本人に見解を質すことができた。教授からは、ハイデガーの思惟そのものと、ユダヤ人問題は区別して捉えるべきであるとの見解を得た。加えて、2015年3月から3ヶ月間、トラヴニー教授が主宰する「マルティン・ハイデガー研究所」で在外研究を行う予定であることから、その際の課題「ハイデガーとユンガーを巡るニヒリズムの問題と、現代における労働のあり方」の確認を行うことができた。 また研究論文としては、人間存在の「労働」を捉える一視点としての「身体性」について、「心身問題に対する現象学の立場―ハイデガーとメルロー=ポンティの思惟に即して―」を『人文学論叢』第15号に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内のハイデガー研究者との連携については「ハイデガー・フォーラム」等を通して実現すべく、当初から研究計画の内に入っていたが、平成25年3月より再開発足された「関西ハイデガー研究会」によって大幅に促進された。とりわけ、当該研究会にユンガー研究で第一人者と言える京都産業大学の川井全弘教授が参加されていたことは、本研究課題遂行に対してきわめて有益であった。 また、関西ハイデガー研究会での研究発表に基づいて「日本現象学会」のワークショップでの発表「ユンガーとニヒリズムの現在」を提題することができたことも、計画を上回る成果であったということができる。これについては2014年度の『現象学年報』にその概要が掲載予定である。 年度末には、海外出張で当初計画していた通り、ヴッパタール大学のトラヴニー教授を訪ねることができ、現在最も議論されている「ハイデガーとユダヤ人問題」について見解を質すことができたことも、予定外の成果であったということできる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、関西ハイデガー研究会、ハイデガー・フォーラムを中心に国内のハイデガー研究者との連携を深めながら、ハイデガーとユンガーの思惟の連関、及びそれと現代の危機をめぐる労働のあり方について考察を深めていく。この成果の一端は、2014年に出版予定の『ハイデガー読本』に「ニーチェとユンガー―ニヒリズムの超克を巡って―」のタイトルで寄稿予定で、現在準備中である。 また平成26年度末にはヴッパタール大学ハイデガー研究所のトラヴニー教授のもとで3カ月関在外研究が可能になったことから、ハイデガーの思惟の問題と、ユンガー自身の思惟の問題についてさらに研究を深めていく。 こうした経過の中で、ハイデガー全集第90巻『エルンストユンガーへ』の翻訳も完成させる予定である。
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