研究課題/領域番号 |
25370022
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山本 與志隆 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50294781)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイデガー / ニーチェ / ユンガー / 労働者 / 現代の危機 / 存在の歴史 / 力への意志 / 形態 |
研究実績の概要 |
平成26年度においても、前年度に引き続き、ハイデガー・フォーラム、関西ハイデガー研究会を中心に、国内のハイデガー研究者と連携しつつ、ハイデガーの思惟、とりわけニーチェ及びユンガーとの連関の中での、ニヒリズムと伝統的な形而上学の克服に関する解釈を充実、深化せしめた。その成果の一端は、ハイデガー・フォーラムの中心メンバーによって編まれた『ハイデガー読本』(法政大学出版会、2014年11月)所収の「ニーチェとユンガー―ニヒリズムと形而上学の超克を巡って」として公刊された。 また口頭発表として、平成26年度京都ヘーゲル読書会冬期研究例会(平成27年1月11日、京都教育学生センター)において「ニヒリズムの形態としての労働者-ハイデガーとユンガー」の発表を行った。ここでは多くのハイデガー研究者も参加しており、これまで光の当てられることの少なかったハイデガーの思惟の側面として、ユンガーの思惟の関わりの中に、その技術論を位置づけることについて指摘し、有益な議論を深めることができた。なお、この発表の骨子は「ニヒリズムの現在-総動員と技術の本質について」(『愛媛大学法文学部論集人文学科編』第38号、2015年2月)として、すでに公表されている。 さらに、本研究と平行して、平成26年度愛媛大学法文学部人文系担当学部長裁量経費に研究プロジェクト「西洋文明と日本思想とにおけるニヒリズムの現在」(研究代表者・山本與志隆)を申請し、採択された。ここで西洋文明の中でのニヒリズムのあり方を考察したことも、本研究の進捗を促すものであった。 なお現在は、平成26年度末の3月より、ヴッパタール大学(ドイツ)のマルティンハイデガー研究所のP. トラヴニー教授のもとで海外研修中である(3ヶ月)。この間に、ハイデガー全集第90巻『エルンスト・ユンガーへ』の日本語翻訳の目途を立てる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「研究実績の概要」に示したように、学術論文2件(内1件は、『ハイデガー読本』の中の1章に相当)と学会発表1件を行うことができた。また、『ハイデガー読本』では、ハイデガー全集の翻訳担当である第90巻『エルンスト・ユンガーへ』の解題も担当した。さらに、平成25年度に日本現象学会で行ったワークショップ「ユンガーとニヒリズムの今」の概要が『現象学年報』第30号に掲載された。こうした点から鑑みると、当初予定していた研究成果の発表の水準を十分満たしており、それに応じて研究内容の充実・深化も達成されていると言える。 また、平成26年度末からの海外研修で、前述のハイデガー全集第90巻『エルンスト・ユンガーへ』の日本語版翻訳も一定の目途を立てる段階まで来ている。その点でも当初の研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、国内ではハイデガー・フォーラム、関西ハイデガー研究会を中心に、ハイデガー研究者、現象学者と連携しつつ、ハイデガーの思惟、とりわけニーチェ及びユンガーとの連関と、その中で捉えられた「労働」あるいは「労働者」のあり方、さらにニヒリズムとニーチェの「力への意志」の形而上学に関する解釈を徹底、深化せしめていく。 その際に、先に言及したハイデガー全集第90巻の日本語翻訳をできる限り完成に近づける。それとともに、ここから読み取られる内容に基づいて、本研究の課題との連関で明らかになる研究成果の発表を行う。 また、ヴッパタール大学のP. トラヴニー教授を初めとして、海外のハイデガー研究者とも積極的にコンタクトを取ることで、本研究の内容をより豊かなものとしていく。 さらに最終年度として、本研究の総括を行い、「労働」を巡るハイデガーの思惟の究明と、ニーチェ、ユンガーの思惟の連関の解明に基づいて、本研究課題である「現代の危機の転換」の可能性を示唆すべく、研究報告書をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に別経費での海外研修を控えていたことから、3月時点での物品購入の予定が立てられなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の物品費として使用する。
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