研究課題/領域番号 |
25370024
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
神谷 英二 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (40316162)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヴァルター・ベンヤミン / 弁証法的形象 / 固有名 / アライダ・アスマン / 文化的記憶 / ジル・ドゥルーズ / 消尽 / 瓦礫 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究成果を踏まえ、共同体における集合的記憶の忘却・喪失・再生について「ベルリン」という固有名を手がかりに探究するため、ベルリンにある「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」と「ベルリン・ユダヤ博物館」を導きの糸として、瓦礫と廃墟を記憶する行為がどのような空間と時間において生じているのか、そしてこうした空間で誰かを何かを記憶し記念することが可能なのかを明らかにする作業を開始し、研究成果の一部を公刊した。 そこでの、議論の順序としては、まずコメモラシオンについて考えるために有力な手がかりとなるピエール・ノラの「記憶の場」とアライダ・アスマンとヤン・アスマンによる「文化的記憶」の理論について概観した。また、その過程で「記念の場所」についても整理した。次に、記念の場所が置かれた空間を論じ、この空間をジル・ドゥルーズの概念を応用して「消尽した空間」として描き出した。その上で、こうした空間がいかにしてコメモラシオンとしての記念の場所になり得るのかをヴァルター・ベンヤミンの「弁証法的形象」と「固有名」を手がかりに解明した。 なお、この研究の過程で、現象学的地理学における「空間」と「場所」に関する研究を援用し、「記念の場所」の概念を定義した。 また、これまでの研究成果のうち、物語的自己同一性に関わるものを終末期医療の緩和ケアにおける患者へのナラティヴ・アプローチのなかに導入し、緩和ケアに携わる医療職向けのリカレント教育に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、本研究課題を申請する際に提出した「研究実施計画」にほぼ沿って研究が進んでいる。 ただし、平成27年度後期~28年度前期に国際的学術集会で口頭発表を行う予定であったが、想定していた学会が延期されたため、「研究実施計画」どおりに成果の発信をすることは不可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今研究課題は平成28年度が最終年度である。 「研究実施計画」に従い、研究の総括を行う。また、これまでの研究成果を踏まえて、平成29年度以降の、科学研究費補助金により推進する新たな研究計画をデザインする。 上述の、予定が変更された国際的学術集会での研究成果発信については、平成28年度までの成果をまとめて、平成29年度以降国際学会等で発表することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の文献1点の発行が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、当該文献を購入する。
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