研究課題/領域番号 |
25370030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大黒 岳彦 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 教授 (30369441)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メディア / 技術 / 技術哲学 / インターネット |
研究概要 |
本研究は、今世紀に入って急速な進歩を遂げたソーシャル・ネットワークやクラウド、動的検索技術、電子書籍といったインターネット上のメディアテクノロジーを、ラジオ・テレビといった旧来のマスメディア技術とともに、独自の“種”をなす「技術」として概念規定し、「技術哲学」の観点から批判的省察を行う試みである。 本年度は、「技術哲学」における主要テーゼをサーベイし、「メディア技術」の考察とその本質の定式化にとって有効な議論を引き継ぐと同時に、その限界をも見据えることが主たる課題となった。検討の対象となる哲学的テーゼは、①M.ハイデッガー技術論の「配備=集立」(Gestell)の概念、②三木清の技術哲学の「〈形〉成」概念、③A.ゲーレンの人間論における技術把握である「負担免除」(Entlastung)概念である。 同時にまた近年の技術論の成果であるL.FloridiによるPhilosophy of Information(Oxford University Press, 2011)およびハイデッガー技術論を多分に意識したB.StieglerのLa Technique et le temps: Tome 1. La faute d'Epiméthée (1994) La Technique et le temps: Tome 2. La désorientation (1996)も伝統的な哲学的技術論の最新の到達点として検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L.FloridiによるPhilosophy of Information(Oxford University Press, 2011)の入手が遅れたため、フロリディの技術論の検討に関してのみ若干予定より遅れが見られるが、その他に関しては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後若干の研究計画の変更を検討せざるを得なくなる可能性がある。というのは、当初、現代のメディア技術に関する主たる論者として、「研究実績の概要」にも記したとおり、L.FloridiおよびB.Stieglerを想定していたが、研究の進展に従い、彼らよりも、カルチュラル・スタディーズの流れから出てきた新しい潮流、具体的には、B.Massumi、S.Shaviro、J.Bellerなどのアプローチの方が本質的であり、また重要であることが判明してきた。彼らの主張の特徴は、インターネット環境がどのようにわれわれの文化を変容させてゆくかを論じるにあたって「身体」の変容を強調する点である。とりわけ、Bellerが提起する「注意のエコノミー」という発想は、極めて注目に値する。今後、彼らの研究動向をもフォローしてゆきたい。
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