研究課題/領域番号 |
25370038
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 博雄 長野工業高等専門学校, 一般科, 教授 (90141887)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フリートレンダー/ミュノーナ / カント / 平和 / 教育 / 理性 / 科学技術 / 未来 |
研究概要 |
年度当初に提出した交付申請書「研究実施計画」(1)(2)(3)に沿って研究成果を報告する。 (1) イマヌエル・カント大学(ロシア連邦 Kaliningrad、旧 Koenigsberg)で開催された国際会議 "Kant-Tage 2013"(4月18~23日)で講演(ドイツ語)をおこなった。題目:Kants Weg zum ewigen Frieden im 21.Jahrhundert(21世紀におけるカントの永遠平和への道)。この講演原稿は、ロシア語に翻訳されて同大学の学術誌"Kantovsky Sbornik"(2013, 4(46), pp.7-14)に掲載された(翻訳者Alexey Salikov)。あわせて、会議の概要を、同国際会議主催団体Freunde Kants und Koenigsbergsのホームページにドイツ語および日本語で報告するとともに、学術誌『理想』692号(理想社、2014年3月、pp.169-172)に掲載した。 (2) フリートレンダー/ミュノーナ全集の編者H.ゲールケン、D.ティール両氏との連携を密にして、平和論・教育論に関係する文献を整理した。特に、両氏によってベルリンの"Literaturhaus Berlin"(ベルリン文学館)で開催された「フリートレンダー/ミュノーナの会」(11月15日)では、参加者から貴重な資料・提言を得ることができた。また、ベルリンのドイツ国立図書館で関係文献を調査、確認した。 (3) 文献整理の過程で次の2点が明らかとなった。①フリートレンダー/ミュノーナは、独特の「極性論(Polarismus)」によって平和論を展開していること、そして、②それを独自の「実践論」(道徳的目的論)の形で具体的に科学技術論・未来論へと展開させていること。以上の解明が、"Technik und Phantasie"(技術と空想)という新たなテーマの展望を開き、著書『技術と空想 ― ザーロモ・フリートレンダー/ミュノーナ グロテスケ作品選集』(新典社)の編集へとつながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フリートレンダー/ミュノーナ独自の「実践論」の考察を深めることによって、研究の方向性を科学技術論・未来論へと大きく展開させることができた。この新たな観点から研究計画を再検討し、現在、具体的に次のように研究を進めている。(1) 平成26年4月にイマヌエル・カント大学(上掲)で開催される国際学会"XI International Kant Readings: Kantian Project of Enlightenment Today"での講演の準備。題目:Technik und Zukunft der Menschheit. Die Bedeutung der Aufklaerung im 21. Jahrhundert(技術と人類の未来 ― 21世紀における啓蒙の意義)。(2) H.ゲールケン、D.ティール、山本順子(愛知県立大学教授、フリートレンダー/ミュノーナ研究者)の3氏との共編著"Technik und Phantasie"の準備。平成26年度中に翻訳書『技術と空想』(新典社)として出版予定。(3) 3年間の研究を総括する著書『フリートレンダー/ミュノーナの平和論に見るカント実践哲学の現実性と可能性』(仮題、単著、平成28ないし29年度科研費出版助成に申請)の執筆に着手。
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今後の研究の推進方策 |
独自の実践論・人間論に基づくフリートレンダー/ミュノーナの教育論は、カントの道徳目的論的人間論と直結している。今後は、平成25年度に着手した科学技術論・未来論研究を「人間の本質の解明」へと掘り下げ、著書の形で研究全体を総括したいと考えている。書名は、『フリートレンダー/ミュノーナの平和論に見るカント実践哲学の現実性と可能性』(仮題、単著)とし、平成28ないし29年度年度科研費出版助成に申請する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「国立高等専門学校機構規則第74号」によって平成26年度から高専教員の海外長期出張が可能となった。本科研費研究にとって、フリートレンダー/ミュノーナ全集を編纂中のドイツで全集編者と一緒に本研究を総括できる意義はきわめて大きい。そこで、この制度を活用するために、本科研費研究申請当初の研究計画を変更して経費の使用を平成27年度(科研費研究最後の年度)に集中させることにした。 フリートレンダー/ミュノーナ全集(Friedlaender/Mynona Gesammelte Schriften)の編集に関わっているトリーア大学(ドイツ連邦共和国)で全集編者と直接討議できる機会を生かして、著書(日本語)と論文(ドイツ語)を完成させるという形で本科研費研究を総括したい。著書については『フリートレンダー/ミュノーナの平和論に見るカント実践哲学の現実性と可能性』(上掲)という書名で、また、論文については "Friedlaender/Mynona und Japan" というタイトルですでにそれぞれの全体構想(目次、文献目録等)ができあがっている。なお、ドイツ語論文については"Friedlaender/Mynona Studien" Bd.4 (waitawhile, Herrsching)に掲載される予定であり、著書については平成28ないし29年度科研費出版助成に申請する予定である。すでにトリーア大学のB.Doerflinger教授および全集編者のD.Thiel博士から受け入れの内諾を得ている。
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