研究課題/領域番号 |
25370039
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
川瀬 雅也 島根大学, 教育学部, 准教授 (30390537)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミシェル・アンリ / 生の現象学 / 文化の現象学 / ナショナリズム / 国民国家 / 多文化主義 / 構築主義 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究課題は「主体的個体に定位した「文化の現象学」の構築」であった。 文化という現象は、一般的に、個体を超えた次元で生成するものと理解されている。ある個体に特殊な文化など通常はありえず、文化とは共同体の文化であり、また、一つの伝統として社会の中で制度化されたものだとされる。そして、個体とは、しばしば、こうした共同体や制度のなかで形成された文化によって、一方的に規定されるものとして理解されるのである。 だが、主体的個体に定位するミシェル・アンリの「生の現象学」のうちには、個体から出発して文化を説明しようとする意図を見出すことができる。平成26年度の前半は、とりわけ、ミシェル・アンリの著書『マルクス』の検討を通して、個体的生の現象学的考察から出発して、制度としての文化や共同体の文化をいかに説明できるかを考察した。その成果は、「個体と文化──アンリの生の現象学における制度化と共同体」にまとめ、平成26年6月に日本哲学会第73回大会(北海道大学)において発表した。 また、平成26年度の後半は、多文化主義形成の背景を解明するために、文化人類学、ナショナリズム論、国民国家論、社会心理学などのテキストを通して、文化、民族、国民、国家等がいかに理解されてきたかを検討した。今後も、この研究の方向性を継続する必要があるが、現在のところ、これらの学問分野の基本的理解が、文化、民族、国民などを構築主義的な観点から解明する点にあることが確認されつつある。また、構築主義的な観点に立った場合、従来主張されてきた多文化主義も、むしろ本質主義に基づくものと見なさざるをえないことも見えてきた。今後は、こうした方向の研究性を、ミシェル・アンリの生の現象学の研究と接続する可能性を探っていくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、当初の研究目的に沿って進められ、進捗状況も、若干の遅れはあるが、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」にも書いた通り、現在、「文化」についての多様な観点を獲得するために、文化人類学、ナショナリズム論、国民国家論、社会心理学などのテキストを通して、文化、民族、国民、国家等がいかに理解されてきたかを検討している。今後も、しばらくこうした方向での研究を継続する。 他方、アンリの「文化の現象学」に関する観点としては、アンリの『マルクス』についてさらに考察を深めるために、ヘーゲルの『法哲学』、フォイエルバッハ、そして、マルクスの思想を追い、そうした哲学史の流れの中で、アンリの文化の現象学の意義を確認する作業を予定している。 そして、更にその先には、上記の二つの視点を交差させ、社会科学的な「文化」理解に対して、現象学的な「文化」理解を接続させることをめざし、それを踏まえて、多文化共生をもとづける倫理の可能性を展望したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、フランスやベルギーでの資料収集、または、研究発表を計画していたが、年度当初に所属研究機関が変更になったため、新たな所属先での研究環境の整備などに追われ、海外での発表や資料収集の計画を入念に仕上げることができず、最終的に海外出張を断念したために、研究費の未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の研究費の未使用額は、前年度に計画しながら実行できなかったフランスやベルギーでの研究発表、および、資料収集のための出張費として使用する予定。
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