本研究課題では、研究期間全体を通して、聖母女神系、武神系及び文神系という宝巻区分のもとに、現地調査と伝存する教派系宝巻及び史料に基づき、西大乗教の宝巻を中心に、教派系宝巻の内容と特徴及びその宗教的背景を探った。 その過程で、羅祖の無為教と深い関係にある山東省や大運河・黄河流域にあった関帝・泰山娘娘・孟姜女・二郎神等の故事が、西大乗教の教義に取り込まれて宝巻となり、北京で貴顕の喜捨の下で印刷されたことを導き出した。そして、明末清初には、西大乗教とは別の無為教の流れを汲む教団の布教組織が江南・華南社会に生まれ、それと呼応するように、教派系宝巻も北方からその地に浸透したことを指摘した。
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