研究課題/領域番号 |
25370041
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉永 慎二郎 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (70240330)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 原左氏傳からの春秋左氏經の成立 / 春秋左氏經からの春秋經の成立 / 春秋經に対する原穀梁傳と原公羊傳 / 原左氏傳からの作經に際しての左氏傳の編集 / 春秋經の四種類型文と左傳の四類型文 / 祭祀的概念としての即位と即世 / 当年即位・当年称元から当年即位・踰年称元へ / 正月即位という名の定立 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究成果の発表は、論考として「「原左氏傳」と清華簡「繋年」における即世と即位―「春秋經」の正月即位法の再検討に及ぶ―」(平成29年6月30日、『集刊東洋学』第117号)があり、学会発表として「先秦の「春秋」テキストと「春秋」学」(平成29年6月11日、全国漢文教育学会、於東北大学)、及び「『原左氏傳』の著作意図と「民の主」の時代」(平成29年11月25日、秋田中国学会、於秋田大学)がある。また掲載予定論考としては「先秦の「春秋」テキストと「春秋」学」(『新しい漢字漢文教育』第66号、平成30年6月刊行予定)がある。 この間、昨年来遂行してきた本研究の実施計画の体系化と集大成としての単行本『「春秋」新研究―「原左氏傳」からの「春秋經」の成立と全左氏經・傳文の分析―」の刊行は初校の段階に入っているが予定よりは半年程度の計画の遅れがあり、1年間の延長申請を行った。 本年度の研究の新展開としては、春秋学派による「原左氏傳」からの「春秋左氏經」の成立に至る過程での「名」の思想と論理の確立が「名教」論の出発点と為るとの見解を提起している。即ち「春秋左氏經」の成立により、名による褒貶の筆法と論理の確立は「名を以て教化す」という「名教」を確立し、『管子』軽重篇に「昔は周人天下を有し、諸侯賓服し、名教天下に通ず」と云い、更に『呂氏春秋』や『孝経』に見る「名を後世に揚ぐ」という後世への名の確立による世俗的救済の論理と為り、やがて六朝時代には親の名を避ける避諱の風習の隆盛とともに、「名の宗教」の傾向を顕著にするに至る。来世を説かぬ儒教に於いては「名」は来世に代替する死後の後世における世俗的救済を可能にする論理となり、「名教」としての宗教性を確立するに至る。このような「名」による救済の論理の原点を成すのが、春秋学派による「春秋左氏經」の「名」の論理の確立であることを明らかにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は五か年計画の最終年度として研究成果を集大成する著作を単行本『「春秋」新研究―「原左氏傳」からの「春秋經」の成立と全左氏經・傳文の分析―』(B5版、600頁程度)として原稿を完成させて、校正と索引つくりの段階に入っているが、この作業過程が当初予定よりも時間を要しており、半年程度の遅れを生じている爲。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の『「春秋」新研究―「原左氏傳」からの「春秋經」の成立と全左氏經・傳文の分析―』の編集・校正作業を遂行し、本年秋には同書を一連の研究の集大成として刊行し、その上で当初予定の項目11の「春秋学派の歴史的実態とその展開について」を「名教」論の展開と云う視点を加えて考察の深化を進め、最終的にこれを含む本研究の体系的成果を科研報告に於いてまとめてゆく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より半年程度の作業工程の遅れが生じたため、想定される所要の経費を延長年度に繰り越すこととした為に標記の次年度使用額が生じた。次年度の平成三十年度にはこれらを予定通り所要の経費として使用する見込みである。
|