本研究は、「経学」の成立とその後の歴史的展開について、従前の研究を実証的・批判的に検証し、その新たなる通史の再構築の可能性を探ることを目的としたものである。そのために、清末の経学者、皮錫瑞(1850-1908)の『経学歴史』及び劉師培(1884-1919)の『経学教科書』の訳出と新注作成を中心に据え、研究を展開した。今年度の研究活動は以下の通りである。 ①『経学歴史』新訳注の作成。今年度は「経学統一時代」、すなわち唐代までの部分を訳出し、新注を作成した。 ②『経学教科書』の著者である、劉師培の生涯及びその著述の特徴について、同時代の銭玄同(1887-1939)の評論を訳出することに依って分析を行った。そしてそれを茨城大学人文学部紀要『人文コミュニケーション学科論集』19・20号に掲載した。 ③研究会の開催。訳注作成は研究者間で分担して行ったが、その作業中に明らかとなった問題点や課題を解決するために研究会を計2回(5月9・10日、3月10・11日)開催した。研究会は5月は関西大学総合図書館、3月は茨城大学人文学部井澤研究室において開き、各人が問題点として発見した個所を俎上に載せて、従来の研究を踏まえながら検討を重ね、訳文及び注釈の改訂を行った。 ④昨年度で終了した湖南師範大学図書館所蔵の『経学歴史』手稿本調査の成果を、平成27年10月11日、國學院大學で開催された日本中国学会第67回大会で共同発表した。
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