研究課題
最終年度の本年は,『梵網経』の早期の形態を示す敦煌写本,日本現存古写本,京都国立博物館所蔵本,東京国立博物館所蔵本,房山石経,高麗蔵初雕本・再雕本,金蔵,開元寺版(毘盧蔵)など20数種類を材料として,『梵網経』の最古の形態と後代の変容を綿密に調査した。また,梵網経の写本および関連諸資料蒐集のため,ロンドンとプリンストンに出張した。研究成果の報告として二つの報告を行った。2016年1月にプリンストン大学で行われた国際会議「仏教写本の諸文化」にて,"Coping with Too Many Variants: A New Type of Edition of the Scripture of Brahma's Net"(夥しい数の異本に対応するために─『梵網経』の新たなタイプの校本)と題する報告をした。その中で『梵網経』の写本・木版印刷に見られる特徴として,異本(異読,文字のヴァリアント)が異常なほど多いことを指摘した。そしてそのような場合に,どのような校本を作成すれば初期の形だけでなく,後代の歴史的展開を肯定的に描写できるかを問題提起し,その可能な一方法を『梵網経』に即して例示した。特に中国・日本を研究する研究者から予想以上の賛同を得ることができた。さらにもう一つの報告として,2015年9月に「思想史のための文献学─『梵網経』の研究史と今後の展望」と題する講演を東洋大学東洋学研究所にて行った。また既に出版された研究としては,『梵網経』を含む中国の偽経の特徴について,オランダのブリル社から出版された Brill's Encyclopedia of Buddhism 第1巻に "Chinese Buddhist Apocrypha"(中国仏教の偽経)と題する概説を公表した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
東洋学研究
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Zinbun (Annals of The Institute for Research in Humanities, Kyoto University)
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『『解深密経疏』の心意識相品の研究』 (共著)
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Acta Asiatica
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