東アジア仏教戒律史に最大の影響を与えた『梵網経』について,その早期の写本と木版大蔵経のうちから特に重要な20種類余りを選定し,次の三作業を遂行した。一,最初期の形態を具体的に知るため,早期の段階で失われ,現行本に残されていない文言があるかどうかを精査した。二,最古の形態を復元するため,写本・木版20種以上を校合した批判校訂本を作成した。三,最古の形態がその後どう変化していったかを分かり易く表示するため,重要な変化を示す写本・木版を6種選び,最古の形と後代の変化の様子が一覧できる形で,新たな視点から『梵網経』の校本を作成した。現在,梵網経の新たな校本の単行本を出版準備中である。
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