研究課題/領域番号 |
25370046
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
市來 津由彦 広島大学, 文学研究科, 教授 (30142897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 「二程子」 / 東アジア近世思想史 / 朱子学 / 四書集注 / 朱子語類 |
研究実績の概要 |
本研究は、北宋における程顥、程頤とその思想の事実性究明の密度を高めることにより、南宋~明の思想家が主観の中で思想評価基準として用いる「二程子」評価を近現代側から客観化する。そのことで東アジアの近世儒学思想連動の様態を思想の理念面から客観的に評価する指標を構築することをめざす。平成26年度は、下記「11.現在までの達成度」に述べた理由のため、主として25年度の課題を検討しつつ26年度の課題の遂行に入った。ただし25年度の当初課題を研究全体の前提としており、成果の発表は27年度以降になる。その他、後の年度の計画分の内容について先行的に取り組んだものもある。 すなわち、25年度当初課題の二程の新「年譜」作成をめざして、清・池生春『明道先生年譜』『伊川先生年譜』と民国・姚名達『程伊川年譜』とをつきあわせる作業を進めた。なお未完成である。この新「年譜」作成は研究全体の基礎となるものなので、以後の期間も含めての完成をめざす。関連して、26年度課題の南宋・朱熹の程子像を検討する基礎として、かつて「集刊東洋学」に37回にわたって共同掲載した東北大学朱子語類研究会の『朱子語類』本朝人物篇訳注の電子テキスト化を図った。これは朱熹の北宋像をうかがう素材となり、また二程新「年譜」作成に資するものでもある。27年度中に整備し、28もしくは29年度頃に刊行する所存である。また、27年度計画の実施の準備として朝鮮朝時代に釜山で刊行された中国明代の程子像を示す貴重資料を写真撮影した。さらに、28年度の課題を先取りすることになるが、日本の江戸から明治にかけての儒学言説の社会的位置の転換について、先方の要請により、中国社会科学院哲学研究所倫理学研究室の国際ワークショップで講演をした。 研究費の相当部分は、これらの電子テキスト化のためのソフト費、資料の撮影費、講演のための中国語翻訳謝金の費用にあてた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の申請書の「平成25年度の計画」欄に、「本応募者は、平成25年度までは本務校大学の評議員、副研究科長の職務を負う。大学及び部局の諸事務繁多により、研究時間が不足するおそれがあ」ると述べ、25年度はまさに研究時間が不足する事態に結果的に陥った。加えて平成26、27年度も本務校大学の評議員、部局副研究科長を継続することになり、26年度も研究時間不足の事態は継続した。当初の研究計画に対しては40%程度の探査にとどまっている。困難が予想されるが回復に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度当初計画は、南宋末から明代、及び朝鮮朝における「二程子」評価について検討するというものであった。ただし、上記「11.現在までの達成度」に述べた事情により、後者の「朝鮮朝における「二程子」評価」に及ぶことはおそらくは困難であり、南宋末から明代の「二程子」評価に絞って計画を進めることとする。なお、この27年度計画は、25年度当初計画「二程新「年譜」作成」と26年度当初計画「朱熹の「二程子」評価の検討」を踏まえるものであり、遅れているこの25、26年度計画の実施と並行して重ねて進める。計画の大枠は現段階では変更しない。万一変更するとすれば、最終年度28年度当初に考えたい。 すなわち、以下の四つの課題について検討したい。/①二程新「年譜」作成。/②『四書集注』における「程子」像の検討。/③『朱子語類』巻96~98「程子之書」の訳注と検討。/④南宋末~明代の「朱陸」論の歴史において程顥、程頤を陸・王学と朱子学とに配当する型の形成と、そこには入らない二程の相関観とについて現象の検討、である。③は大学院授業の演習で以前から取り組んでいるが研究期間全体にわたって続く。 設備備品費の大部分は、中国及び日本近世文化史関係資料図書、電子媒体テキストの購入にあてる。また、問題の認識を深めるために終了年度までには中国の程子顕彰史跡の見学を試みたい。27年度も旅費の相当部分を中国の研究者との打ち合わせ及びこの見学費用にあてておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
『集刊東洋学』掲載、東北大学朱子語類研究会訳注「『朱子語類』本朝人物篇訳注」について、大学院生に依頼して謝金により電子テキスト化をはかっているが、全37回中、10回弱分が年度内に完了せず、予定していた謝金が余ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
『集刊東洋学』掲載、東北大学朱子語類研究会訳注「『朱子語類』本朝人物篇訳注」について、大学院生に依頼して謝金により電子テキスト化をはかっているが、前年度に終了できなかった残りの分を完了させるための謝金に使用する予定である。
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