本研究は、北宋における程顥、程頤とその思想の事実性究明の密度を高めることにより、南宋~明の思想家が主観の中で思想評価基準として用いる「二程子」評価を近現代側から客観化し、東アジアの近世儒学思想の連動様態を思想の理念面から評価する指標を構築することをめざす。4年間という前年度までの本研究期間全体にわたり、本務校の評議員、副研究科長の職務を負い、大学及び部局の諸事繁多により研究時間が不足してしまったため、平成28年度は、前年度以前の課題をなお検討しつつ年度課題の遂行に入った。特に25年度課題を研究全体の基礎前提とするのでこれは継続し、その成果発表は29年度以降になる。 すなわち、25年度課題の二程の新「年譜」作成をめざして、清・池生春『明道先生年譜』『伊川先生年譜』と民国・姚名達『程伊川年譜』とをつきあわせる作業を進めている。この新「年譜」は研究の基礎となるので、最終28年度も含めての完成をめざしたが、なお未完成である。関連して、26年度課題としてあげた南宋・朱熹の程子像を検討する前提となり、朱熹の北宋像をうかがい二程「年譜」作成に資する、かつて「集刊東洋学」に37回にわたり共同掲載した東北大学朱子語類研究会『朱子語類』本朝人物篇訳注を前年度に電子テキスト化し、28年度も整備中であったが、これは29ないし30年度以降に公表する所存である。また、28年度計画の日本江戸時代に書かれた古賀精里『崇程』の解析も、27年度に撮影した自筆本と近代の翻刻本と突き合わせつつ検討中であり、興味深い内容であるが、成果をまとめる段階には至っていない。 本年度が最終年度であったが、研究全体が遺憾ながら全く未完成であり、成果発表は29年度以降になる。このことに鑑み研究の継続をはかるため、本研究の基礎的重要問題に若干重なる、南宋初における「二程子」像のあり方の究明をおこなう科研費研究を新たに申請した。
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