研究課題/領域番号 |
25370048
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
大形 徹 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60152063)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 龍 / 角 / 龍の角 / キリンの角 / 復活再生 / ワニ |
研究実績の概要 |
本研究に関わるものとして、以下の講演を行い、論文をあらわした。2014.9.25(木) 府大講座 「中国古代の人物画と龍―龍にはなぜ角があるのか」大阪府立大学Uホール。 「龍角考―その一、キリンの角」『人文学論集』第33集、大阪府立大学人文学会、2015.3、13-44 仰韶の遺跡に貝殻を並べた龍があり、その背には被葬者の魂と思しき人物が跨っている。龍の原形はワニで、その役割は被葬者の魂を天界に運ぶことにあったと推測した。晋、張華の『博物志』や唐、杜甫の詩等に水平線から天漢を遡る話がみえる。ワニの背に乗れば水平線から天漢、つまり天へと昇りうるのであろう。龍の原型がワニだとすれば、その角は何なのか。それは生えているのではなく、つけたものであろう。殷周では、キリン形の角がつけられている。これは龍以外に「鳥」や「人」もつけている。鳥や人には、本来、角がないため、この角は冠のように着脱できるもので、その動物の頭に元から生えているのでないとわかる。そのことから龍にも本来、角がないということになり、龍の原型がワニであることの強力な証拠となる。実際、着脱するようにホゾのあるキリン形の角が出土している。「みづち」は角のない龍とされるがワニであろう。ワニは水平線の彼方に行き着けば天に昇りうるが、キリン形の角を戴くことにより、さらにその能力を強化させたのではないか。背の高いキリンの頭頂に生える角は天と結び付けられていたのである。 白川静は「龍」について「頭に辛字形の冠飾をつけた蛇身の獣の形(『字統』)」という。甲骨文の字形にはキリン角を頭につけた龍も多数ある。玉器の龍の角とも同じ形である。辛字形と呼ばれるものは「角」であり、それは「冠飾」で、とりはずしできるものと白川は考えていた。龍の角に関しては考察されることが少なかったが、その意味、役割がわかり、本課題の解明に役立つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
龍の原型は、ヘビだという説、ワニだという説、竜巻だという説など、多くの説がある。それらの説にとって、龍の頭に生えている角の問題は避けて通れないものであったはずである。なぜなら、ヘビもワニも角はないからである。ところが、そのことを正面から、考察した論考は、皆無であった。今回、龍の角が、ワニの頭にキリンの角をつけたもので、キリンの角には「天」の意味がある、との考察結果を得て、本課題の重要な部分の解明が進んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、扶桑の問題について、くわしく、考察したい。扶桑については、これまでよく知られているが、太陽を生み出す樹木として、復活再生のイメージをもつものとして、考察したい。それが死者のあの世での復活再生観念と重ね合わされていくと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
16円で買うべきものがなかったため、16円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費等とあわせて、使用する予定である。
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