研究課題/領域番号 |
25370051
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
遊佐 昇 明海大学, 外国語学部, 教授 (40210588)
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研究分担者 |
荒見 泰史 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (30383186)
劉 勲寧 明海大学, 外国語学部, 教授 (90261750)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 道教 / 敦煌文献 / 俗講 |
研究実績の概要 |
本研究は、現在に至るまで広く中国社会に継承されている道教、仏教に対する信仰が、どのように中国社会の多くの層の人々の間に広がり、受け入れられたのかを、その重要なポイントとなるであろう唐・五代期に焦点を当てて、どのような方法や経路をたどって、どのように受容されていったのかを研究するのを目的としている。 そのために、具体的な研究方法としては、敦煌文書に残させている俗講関連資料をさがしだして、写本の翻刻を進めると同時に、その解読に努めて、当時の俗講の具体的様相を解明していく作業を通して表題に示した「唐・五代期における道教の布教と社会での受容の研究」を進めている。 具体的には、道教の俗講の様子をそのまま伝える敦煌写本BD1219,BD7620について、その翻刻と解読をほぼ完了し、その両写本から読み取れる具体的な俗講の現場の有様を解明してきた。それでも具体的に取り上げることのできる直接に関連すると考えられる資料の点数が数少ないことから、さらに厚みのある研究を目指して、現在はP3021,3876写本に目をつけて、その解読を目指して、翻刻作業を続けている最中である。この写本は比較的長い写本であることで、新たな視点をもたらしてくれているが、途中の部分に裏書の文書の文字が映り込み文字の読み取りが難しい一面を持っているが、継続中である。 ここまでの研究実績として2015年3月にここまでの研究成果を取りまとめて上梓した『唐代社会と道教』の中の一部に公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間中に、道教の唱導文であるBD1219,7620については、ほぼ解読の作業を終え、そこから読み取れる当時の道教の俗講の有様の一部を具体的に把握することが出来たが、P3021,3876の写本については、予定通りにその翻刻、解読の作業が進行していない。 その理由として、小生自身が2012年度より所属する大学の学部長の職に就いたことが原因として挙げられる。その管理職に就いてからは思うように研究に向ける時間が取れずに苦しんだ。合間を見て、文獻研究を少しづつは進めているが、まとまった時間が取れないことから、本研究の方法論の一つとして欠くことのできない現地での調査ができないでいることも挙げられる。 2期4年続いた学部長職を2016年3月に退いたことから、これからの時間で研究の遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
文献資料の翻刻と解読をP3021,3876を中心に進める。この写本はかなり大部なものであることから、この作業には比較的多くの時間を費やすことになると考えている。それと同時に、ここまで研究を進めてきた道教の俗講がどのような経路で、敦煌にもたらされてきたのかを合わせて考えていきたい。 敦煌は道教そのものが独自に発展する文化背景は持っていなかったと考えており、この流入の経路を見つけることが重要な問題となる。私見では、唐・五代期において衰退していった長安等の中原の地域にはその活力は乏しかったと考えられ、戦火を直接に浴びることのなかった現在の四川省成都こそが、当時の宗教文化(特に道教において)の発信を担っていたと考えており、その糸口を探すことに精力を傾けていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2012年度より2015年度において、所属大学の外国語学部長、及び応用言語学研究科長を兼任していた。管理職業務として、学期中においても、夏季休暇中においても多忙な日々を送ったことにより、計画していた現地調査、及び日常的な研究の蓄積にも十分な時間が用意できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、夏季休暇中を利用して現地調査を行う予定である。また、敦煌文献、及びそれとの関連において注目している四川地方の文献資料の購入に充てていく計画である。
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