研究課題
平成27年度においては、沙門宗『因明正理門論注』の校訂と現代語訳の作成(一部)を進めた。本文献は国内外の仏教論理学研究者(インド論理学、東アジア仏教論理学)のあいだで注目されており、概要について論文を発表(『東アジア仏教研究 』)したほか、国内で二度、本文献に関する研究会が開催され、概要の報告、現代語訳の検討等を行なった。未翻刻文献を翻刻することを通じて東アジア仏教研究の再構築をはかる、という本研究の方法論は、本文献の「発見」とその後の反響によって、その妥当性が明らかになったとも言えるだろう。加えて平成27年度においては、新たな未翻刻文献として佛教大学所蔵『大智度論略鈔』の翻刻・校訂、鳳潭『因明論疏瑞源記』(一部)のデジタル化、水木家資料・唯識比量の翻刻とデータ入力等を行った。前者は、慧影、霊見、僧侃らの『大智度論』注釈からの引用が多く、南北朝から隋の仏教を知る資料として価値があると考えられる。当初の計画では、最終年度にこれまでの翻刻・校訂作業をまとめた報告書を作成し、研究者に配布する予定であったが、校訂作業等に予定以上の時間がかかり、年度内の公開には至らなかった。もっとも校訂作業自体は進んでいるので、できるかぎり早い段階で報告書として公開したいと考えている。報告書には、聖語蔵所収『法華決釈記』『法華略讚嘆』『法華経二十八品略釈巻上』『金剛般若經疏』、佛教大学図書館蔵『大智度論略抄』を収録する予定である。沙門宗『因明正理門論注』については、上記の通り、すでに大きな反響を得ているため、報告書とは別の形での発表を考えている。校訂を行なっていない文献についても、デジタルデータを公開する予定である。
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東アジア仏教研究
巻: 13 ページ: 135-150
漢字文献情報処理研究
巻: 16 ページ: 26-33
Gregor Paul eds. Logic in Buddhist Scholasticism: From Philosophical, Philological, Historical and Comparative Perspectives
巻: 1 ページ: 351-370