研究課題/領域番号 |
25370055
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桜井 宗信 東北大学, 文学研究科, 教授 (30292171)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サキャ派 / チャクラサンヴァラアビサマヤ / チベット密教 / ルーイーパーダ流 |
研究実績の概要 |
(1)前年度における考察の過程で「ルーイーパーダ流」の伝承に連関を有することが明らかとなったSa chen Kun dga' sning poの著作『チャクラサンヴァラタントラ註』を新たに考察対象に加えて,その電子ファイル化,現行『チャクラサンヴァラタントラ』本文との校合及び翻訳を進めながら,引用されているナーローパなどルーイーパーダ流に関わる人物の所説の確認を進めることで,Sa chenに伝わった「ルーイーパーダ流」の具体像を考察する基礎資料の収集を図った。 (2)前年度新たに参照文献に加えたBu ston Rin chen grub著『サンヴァラ概論』の後半部の読解を進め,その「ルーイーパーダ流相承師資伝」の内容を明らかにすると共に,同内容を扱っているSa pang著『サンヴァラ・ルーイーパーダの十万粒』の第2部分との比較対照を行って,両資料間の影響関係等を考察した。 (3)平成26年11月に行った日本密教学会における研究発表の内容,及び同12月に行った密教図像学会におけるそれに,上記(2)の成果を含めこれまでに得られた新たな知見をも併せて,「サキャパンディタの〈ルーイーパーダ流〉理解―『サンヴァラ・ルーイーパーダの十万粒』を中心に―」及び「Bu stonの示すCakrasamvara観想法―rNal 'byor bshi ldanを中心に―」という2篇の論文に纏めて,それぞれ『密教図像』,『智山学報』上で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Sa chen著『チャクラサンヴァラタントラ註』の考察を主に実施したため,本年度予定していたTsong kha paの著した「ルーイーパーダ流」所属諸書の読解に取り組めなかった,という事情に基づく判断である。 但し本研究課題の目的が「サキャ派に端を発する同流儀伝承の明確化」であることからするならば,「サキャ派五祖」初代である彼の著作中に同流に関わる内容を見出しその詳細を明らかにすることは非常に重要であり,課題全体の深化を齎す手続きと判断されるため,それに起因する本遅延はやむを得ないものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記Sa chenの著作の考察を引き続き行うと共に,やはり一昨年度の研究を通じてサキャ派における「ルーイーパーダ流」の伝承を基盤に有する著作と判明したbSod nams rtse mo著『チャクラサンヴァラ供養儀軌』を更に資料に加え,その解析を進める。 これらの結果得られた成果に前年度までの成果をも加え,学会発表或いは論文刊行など適切な手段で公表し,評価の機会を得る。
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