研究実績の概要 |
平成27年度には,ミーマーンサー学派のクマーリラがヴェーダ諸流派に求めた寛容と,仏教に対する不寛容とが表裏一体の相関的関係にあることを解明する論文を完成して,龍谷大学現代インド研究センターより『クマーリラによる「宗教としての仏教」批判―法源論の見地から―』RINDASワーキングペーパーシリーズ25として刊行した(全72頁)。グプタ朝後の時代に入って,新興の国王たちがバラモンに盛んに寄進をおこない,それをめぐって地域のヴェーダ諸流派の間でせめぎあいが高まったので,クマーリラは,どのヴェーダ流派も互いに対等でありバラモンどうし協調すべきことを訴えたが,その反面,バラモンたちの結束を高めるためにバラモンにとっての共通の敵を作り出す必要を強く感じて,バラモン階級出身の思想家を多く擁していた仏教出家教団を激しく排撃したと考えられる。 さらにミーマーンサーとヴェーダーンタとの連続性の一面として,ヴェーダーンタでの絶対者の呼称のひとつの「最高我」(paramaatman)に関する思想が,古代のウパニシャッドから中世のヴェーダーンタ学者に至るまで,ミーマーンサーで強調する行為の継続的遂行と密接にかかわり続けていたことを解明して,6月末にバンコクで開かれた国際サンスクリット会議において研究発表を行い,年末には,会議の紀要に載せる論文を完成し提出した。瞑想は身体を動かさないにもかかわらず行為の一種であるとヴェーダーンタで考えることは従来より指摘されていたが,brahman, iishvaraと並びヴェーダーンタで頻繁に同じ絶対者の呼称となるparamaatmanは,個人が瞑想により到達するべき対象として常に考えられていたことが,本発表により明らかになった。
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