本研究は、言語学と文献学の両面から、古・中期インドアーリヤ語文献における韻律の実態を調査し、歴史的展開を解明することを課題とする。これまでに本研究者が蓄積した原典の韻律分析結果を再検討し、リグヴェーダから中期インド語最終段階にあるアパブランシャ語文献までの韻律を対象に、その形成・発展過程を具体的かつ体系的に著すことを目指す。最終年度である平成30年度には以下の研究活動を行った。 1.平成25年度から29年度の4年間に、ヴェーダ語文献(リグヴェーダ、アタルヴァヴェーダ、ヤジュルヴェーダ、ブラーフマナ、ウパニシャド)、叙事詩(マハーバーラタ、ラーマーヤナ)、パーリ語・仏教梵語・西北インド方言等による仏教文献(初期仏典と初期大乗仏典)、アルダマーガディー語を中心とする初期ジャイナ教典の韻文を対象に、韻律と言語に関し再検討を行った。30年度は、それらの検討結果を統合し、韻律の歴史的発展を考察し、その道筋を明らかにした。 2.韻律の発展に、休止、音節、マートラー、軽重、音楽演奏、古インドアーリヤ語から中期インドアーリヤ語への音韻変化などの要因が大きな役割を果たしたことを、研究計画の当初から予測していたが、具体的に文献の上で確認した。 3.上記の研究成果として得られた、「古・中期インドーアーリヤ語の韻律発展史」の概要を日本語と英語の論文にまとめた。日本語版はほぼ完成している。英語は校閲段階にある。研究年度内での出版には間に合わなかったが、速やかな出版を目指している。 4.本年度は、これまでの研究成果の取りまとめに時間と労力を集中したため、学会発表や出版は行わなかった。
|