研究課題/領域番号 |
25370060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 身延山大学 |
研究代表者 |
望月 海慧 身延山大学, 仏教学部, 教授 (70319094)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ディーパンカラシュリージュニャーナ / アティシャ / インド仏教 / チベット仏教 / 密教 / アシュヴァゴーシャ |
研究概要 |
ディーパンカラシュリージュニャーナの著作のうち,顕教に関する文献の批判的校訂テキストを完成させた.ただし,その出版には語彙索引も付す予定であったが,これについては密教文献の批判的校訂的テキストを完成させた段階で,あわせて作成することにする. この校訂テキストに基づき,彼が顕教文献において言及した文献と論師について分析し,その結果を第13回国際仏教学会(ウランバートル)において発表した.これにより彼が中観派文献にのみ依拠しているのではなく,唯識派文献に依拠していることが明らかになった.この成果は,同時代のインドの諸論師のものと比較検討することにより,11世紀におけるインド仏教の思想的枠組みを再構築するための資料となりうるものである. この校訂テキストに基づく和訳も完成しており,これらを基礎資料として彼の思想的特徴の解明を行った.まず受戒儀礼について『発心律儀儀軌次第』を取り上げ,同論が先行するナーガールジュナ、ボーディバドラの儀軌文献に基づいて著されていることを明らかにした.特に,「戒品」の引用を含めた後者の著作との関係を詳細に分析し,11世紀のインドにおいて行われた受戒儀礼を解明した.この成果は,宮川了篤編『日蓮仏教における祈りの構造と展開』(山喜房仏書林)において発表した. 彼の密教文献のうち『根本過犯註』の解読を行い、その成果をActa Tibetica et Buddhica 6 において発表した.本テキストの根本テキストはアシュヴァーゴーシャに帰されているものの,ディーパンカラシュリージュニャーナは他の論師に言及しており,『十不善業道論』に続いて,両者におけるテキスト伝承の新たな疑惑が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディーパンカラシュリージュニャーナの顕教文献の研究については,事前研究において十分な準備を行っていたために,順調に進んでいる.ただし,批判的校訂テキストの出版については,語彙索引の作成を密教文献と合わせて行うために,次年度以降の作業に変更した.これは,同一著者の語彙索引を2箇所に分けて掲載するようりもまとめた方が利便性があるという理由からである. 密教文献の調査では,アシュヴァゴーシャの密教文献をめぐる問題が新たな研究課題として提起されたが,これらを含めた上で,11世紀におけるインド・チベット仏教思想の展開を解明していくこととなる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ディーパンカラシュリージュニャーナの密教文献の解読を行っていく.事前研究において解読が終わっているものもあるが,未読のものについては,校訂テキストの作成と和訳を順次行っていく.この作業をベースにして,彼の密教思想を解明する.これらの成果として,最終年度に密教文献の批判的校訂テキストと彼の著作における語彙索引を完成させる予定である.ただし,テキスト・データの入力や校閲などの作業は時間を要することから,研究補助を依頼することで作業の効率化を図ることにする. また,彼の伝記資料も取り上げ,著作には見られない彼の思想と行動を分析する.これらは上記の作業と直接に関係しないが,彼の思想形成の背景や同時代の論師との関係を明らかにすることで、11世紀のインド・チベットにおいて形成された仏教思想を解明することになる.
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