研究課題/領域番号 |
25370066
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研究機関 | 北海道武蔵女子短期大学 |
研究代表者 |
榊 和良 北海道武蔵女子短期大学, その他部局等, 講師 (00441973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 翻訳文化 / ペルシア語 / 占術 / 百科事典 / インド古典諸学 |
研究実績の概要 |
6月には、バンコクで開催された第16回国際サンスクリット学会で、Identity of the Translators and Adapters: Written Sources of Yoga in Persian と題して発表を行った。これまでに同定されたヨーガに関連するサンスクリット古典のペルシア・アラビア語訳の中で、異なる宗教的伝統をもつ翻訳家たちがヨーガの思弁と実践を、それぞれの文脈でどのように理解し共有していったのかを、インド人カーヤスタとイスラーム・スーフィーによる同じ文献の翻訳の注釈のつけ方の違いを通して分析した。9月には、インドの伝統的学知に関して13世紀から19世紀までにペルシア語で著された翻訳文献や論攷に関する調査研究を目的としたPerso-Indica というプロジェクトのメンバーとして、デリーでの第3回学術大会に参加し、Changing Ourselves - the textual transmission of the Sivasvarodayaと題して発表を行った。インドにおけるイスラーム系言語による翻訳活動の黎明期において初めて紹介され、その後、百科事典などに繰り返し引用された占術文献について、そのルーツとなったサンスクリット語および土着語のテキストの存在を示し、ペルシア・アラビア語による翻訳文献の伝搬とその影響について検証した。研究者たちとの意見交換を行い、プロジェクトとしての翻訳文献データベースの出版計画について分担を確認した。インドの古典的学問体系に関する写本調査においては、インド・パキスタン国内の写本複写をめぐる状況が変化しつつある中、9月におこなった調査の結果、今まで看過されてきたインドで著されたペルシア語百科事典の中に、伝統的なインドの古典諸学が含まれていることが明らかになってきて、それを公表する見通しが立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学問体系に関する諸文献の翻訳はほぼ順調に進んでいるが、専門性が高いものについてはそれぞれの分野のサンスクリット学者に助言を乞う必要がある。一方、出版されたテキストにおける欠落や不明瞭さを補うための信頼に足る写本の収集は、諸研究者の協力により充実しつつあり、該当箇所の抽出と異読の分析などが残されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、これまでに同定されたインド古典諸学の体系を叙述したペルシア語文献資料を整理しその内容分析の結果をまとめる。一方、『真理の綱要』に含まれる翻訳文献の属する学問や技芸の分野を特定し、いかなる学問や技芸の分野にムスリムの関心が注がれ、必要とされたのか、翻訳の担い手や対象はいかなる人々であったのかの分析結果を明らかにする。さらに、この書の中で示される創世神話の叙述が基づいた翻訳資料およびその原典資料の同定をすすめる。成果の途中経過の発表として、翻訳・翻案文献に示されるイスラーム的解釈の典型的な事例といえる業と輪廻論をとりあげて、諸翻訳文献がどのような解釈を示してきたのかを横断的に精査し、その結果を国内外の学会で発表する。
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