研究課題/領域番号 |
25370072
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
關 一敏 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 名誉教授 (50179321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宗教学 / 幸福の四象限 / マチバ / 無事 / 福分 / 時間の多層性 / ひととなり |
研究実績の概要 |
本研究は、福岡市のマチバの日常生活をフィールドとし、人々が幸福を求めて生きる技法そのものを対象とする。都市の生活世界においては、a)場所、b)時間、c)成員、d)職業の四点を焦点化し、こうした環境を生きる人々の生活の知恵(ハビトゥス[そなえの民俗])として、A)個々人のそなえ、B)出会いと社交の作り方の二点にまとめる。 二年目にあたる今年度は、A)個々人を焦点化した初年度をうけて、継続調査をおこないつつ、B)出会いと社交へと場面の拡大をはかった。すなわち調査地(a)として、博多部(綱場町)、福岡部(唐人町)、周辺(香椎)、郊外旧農村部(脇山)の年中行事をふくめたひと集まりをおき、そこでの地縁の交際のしくみと、被覆的な記憶の深度のあり方を探究した。 B)へと比重を移すことで、再びA)をみると、社会性をあらかじめ内蔵した切りとられない「人物像」(ひととなり、人格、person)が周囲をまきこみつつ調和と安定を図るカギとなることが注目される。この前提にたって、はじめて半人前(c)や雑業(d)のスキマが生じうるとする視角は、なお調査中だが、ひとつの可能性をもつといえる。 また時間(b)の多層性については、加速するグローバルな時間と別種の時間を構築する、マチバの知恵(待つ、蓄える、保存する、遡るなど)のあり方について、仕事と趣味にわたって資料収集と考察を進めた。マチバの夜の作り方については、家庭とマチの二つの場所をめぐって模索をつづけている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の調査研究をうけて、個々人のそなえをふまえた、社交と出会いの場面へと視野を拡大するこころみはなしえているものの、1)マチバの夜の作られ方、2)半人前の幸福論、というきわめて都会的な課題については、ややあしぶみ状態である。この点において「生きる技法」の探求という大筋の目的ははたしつつありながら、具体的細部になお瑕疵があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集と分析視角の双方においてこれまでの研究方針を継続する。ただし、次の二点に比重をおき、最終年度における課題の深化をこころみたい。 1)「ひととなり」を軸とした「無事」と「福分」という対象化しにくい項目については、より厚い事例の集積から再度「幸福の四象限」を検討すること。 2)マチバの「夜」のしくみと、「半人前」の幸福論についても、一歩踏みこんだ事例の集積をこころみること。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品(文具類)購入にあてる予定であったが、運営交付金でまかなえたため、次年度により有効に活用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
物品(文具類)購入にあてる。
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